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v(・∀・*)後十字靭帯損傷の話


(@_@;)題名:後十字靭帯損傷の話

Ⅰ.概要

後十字靭帯(posterior cruciate ligament;以下PCL)は脛骨の後顆間区の外側部から起こり、外側半月から線維を受けながら前上内側方に上り、前十字靭帯の後側を通って大腿骨内側顆の内面前部につく。その縦径は32㎜とされ、最も強靭である。

機能として、①大腿骨に対する脛骨の後方移動を防止する ②膝の過伸展を防ぐ ③前十字靭帯とともに膝伸展時の回旋を誘導する ④回旋安定性に補助的な役割を果たす ⑤全ての線維が緩む肢位はない等の働きがある。

 

Ⅱ.発生機序

(1)膝屈曲位での後方ストレス

多くの症例は、膝関節屈曲位で脛骨上端部を強打し、PCLに強力な後方ストレスを受けて発症する。しばしば脛骨結節部付近に皮膚損傷が認められることにより、本受傷機転が疑われる。原因としてはオートバイ事故が多く、PCLの他に側副靱帯損傷を合併している例も少なくない。最近ではラグビーやサッカーなどの接触スポーツによる受傷が増加しており、多くは転倒し、足関節を底屈した状態で膝から着地した際に発症している。一方、乗用車事故におけるダッシュボード損傷(dash-board injury)で発症することもある。その際、股関節の後方脱臼を合併していることが多く、しばしばPCL損傷が見逃されるので注意を要す。

(2)膝過屈曲

スポーツ損傷では膝過屈曲による単独損傷もある。しかし、単独損傷では日常生活動作やスポーツ活動への影響は小さく、本人自身が受傷したことを自覚していない場合もある。

(3)膝過伸展

膝関節伸展位の状態で、脛骨上端に後方ストレスを受け、膝の過伸展を強制されてPCLを損傷することがある。この受傷機転では、ほとんどの場合がACL損傷を合併している。

(4)内・外反ストレス

膝にかかる後方ストレスは、ストレスの内外方向への変位または下腿の回旋状態により、膝の内反または外反ストレスともなり、種々の程度の側副靱帯損傷や関節包損傷を引き起こす。なお後方ストレスがなくても、過度の内反または外反ストレスでPCL損傷が生じることがあり、このような場合ACLも損傷を受けていることが多い。

 

Ⅲ.症状

(1)受傷直後

膝関節、特に膝窩部の痛みを訴え、脛骨周囲の筋緊張が強い。脛骨結節付近に打撲による皮膚損傷を認めることが多い。関節は腫脹し、ACL損傷に比べて量は少ないが、関節内出血を認める。側副靱帯損傷を合併している症例は、損傷部位に一致して著明な圧痛を認める。疼痛のために膝関節可動域は制限されており、屈曲を強制したり、脛骨上端に後方ストレスを加えると激痛を訴える例が多い。明らかな脛骨の後方落ち込み(posterior sagging)を示す症例もあるが、多くは筋緊張のために後方動揺性を証明しにくい。受傷後1~2週間を過ぎると、腫脹と疼痛は軽減し、可動域の改善とともに後方動揺性がより明瞭となる。

(2)陳旧例

①後方動揺性が小さい単独損傷例

90゜屈曲位での後方動揺性が10㎜未満であれば、伸展位付近での動揺性はわずかであり、通常の日常生活での自覚症状はほとんどない。ただし、階段昇降などで膝蓋大腿関節痛を訴えることがある。特に階段を降りる際に、体重を健側に移し、受傷側の足を上げる瞬間の不安定感を訴えるのが特徴的である。また軟骨損傷(大腿骨内側顆関節面に多い)や半月板損傷(前節部が多い)を伴う例では関節裂隙に疼痛を訴える。

②後方動揺性が大きい例

後方動揺性が10㎜以上になると、階段や坂道での歩行中、または歩行や走行の開始時などで、膝に十分な力が入りにくくなる。そして長時間の歩行で膝周囲の筋肉が疲労しやすく、大腿部や膝窩部に疼痛を訴えることがある。また柔道の大内刈りなどで膝を屈曲させて足を後方に蹴り上げるような動作中に、膝に不安定感が生じる。したがって、スポーツ活動や膝の屈伸を要する作業が困難となる。側副靱帯損傷やACL損傷を合併している場合は、不安定性はさらに高度となり、半月板や軟骨損傷を続発しやすくなる。特にACLや外側支持機構の複合損傷例では、通常の日常生活でも高度の機能障害を認めることが多い。

③関節症変化をきたした例

PCL不全に伴う関節症変化は、内側大腿脛骨関節および膝蓋大腿関節に好発し、膝内側および膝蓋骨後部に、歩行時痛を認める。

 

Ⅳ.徒手検査法

(1)後方引き出しテスト

PCL損傷膝の後方不安定性を評価する最も代表的なテストである。患者を臥位にし、患側の股関節を45°、膝を90°に屈曲させ、検者は両手の親指を膝前方の関節裂隙にあて、手のひらで脛骨上端に後方ストレスを加える。後方ストレスにより、脛骨が大腿骨顆部の後方へすべり込む場合が陽性である。その際、新鮮例ではしばしば膝窩部に疼痛が生じる。

(2)Quadriceps active test

後方引き出しテストと同様の肢位で大腿と足部を支え、十分な筋弛緩を得る。この状態で患者に大腿四頭筋を収縮させる(膝を伸ばす動作をさせる)と、PCL損傷膝では脛骨が前方へスライドする。この現象はACL損傷膝では見られないので、前方引き出しテストでの陽性所見との鑑別診断に有用である。

(3)Gravity test (脛骨上端後方落ち込み徴候、sagging sign)

両下肢を後方引き出しテストと同様の肢位とし、脛骨粗面の位置を側面から観察する。健側に比べ、患側の脛骨上端が後方に落ち込んでいる場合が陽性である。この場合、脛骨内側関節面を親指で触診することにより、落ち込みの程度を評価することができる。

(4)脛骨外旋テスト(tibial external rotation test)

後外側回旋不安定性テストである。膝屈曲位で足内側部または脛骨結節部に外旋力を加える。30°屈曲位で健側より15°以上外旋臥大きい場合は陽性で、弓状靱帯機構、外側側副靱帯および膝窩筋の合併複合損傷が疑われる。

(5)Reverse pivot -shift test

これも後外側回旋不安定性テストである。患者を臥位とし、患側の足を検者の骨盤部に置き、両手で支える。膝を70~80゜に屈曲し、下腿に外旋ストレスを加えると、外側脛骨プラトーが後方へ亜脱臼を起こす。この状態から膝に外反ストレスをかけながら伸展させていくと、約20゜屈曲位で亜脱臼が急激に整復される。本徴候が陽性の場合は弓状靱帯機構、外側側副靱帯およびPCLの合併複合損傷が疑われる。ただし、正常膝でも陽性に出る場合があるので、必ず健側と比較することが重要となる。

 

Ⅴ.評価

(1)検査・測定

①徒手検査

背臥位で股関節45゜屈曲位、膝関節90゜屈曲させ、筋を弛緩させると、脛骨粗面が後方へ落ち込む現象(posterior sagging sign)が認められる。わずかな症例もあるので、健側と比較して確認することが必要である。また不安定性の評価としては、上記の肢位で下腿近位部を保持して前後の動揺をみると後方引き出し徴候(posterior drawer sign)が認められるが、sagging(亜脱臼)のため脛骨が落ち込んだ位置から引き出すと、前方動揺陽性と間違えることがあるので注意を要する。

②MMTテスト

③大腿周囲径

④下腿周囲径

⑤ROMテスト

⑥疼痛:膝窩部に自発痛や圧痛を訴える者が多い

⑦SMD

⑧TMD

⑨動作分析(立ち上がり、歩行)

⑩ADLテスト

(2)問題点抽出

①Impairment Level

♯1 関節可動域制限

♯2 筋力低下

♯3 疼痛

②Disability Level

♯4 起立動作能力の低下

♯5 歩行動作能力の低下

♯6 ADL能力の低下

③Handicap Level

♯7 家庭復帰・スポーツ復帰困難

(3)ゴール(目標)

①短期ゴール:起立動作能力の安定と歩行動作能力の安定

②長期ゴール:家庭復帰・スポーツ復帰

 

Ⅵ.理学療法プログラム

(1)急性期(受傷後2~3週)

膝の腫脹、関節血症、疼痛、可動域制限などの急性症状がある時期である。腫脹と疼痛緩和のために弾性包帯などで膝を圧迫、固定し、患肢は松葉杖部分負荷歩行とする。まず腫脹や関節血症が消退するまでアイシングを1日30分~1時間ずつ日に3~4回行う。それと同時にSLR、外転筋運動、内転筋運動などの下肢等尺性筋運動を負荷をつけて1日に2~3回行う。腫脹が消退し始めたら、今度はシャワー、風呂などで患肢を温め、可動域運動を行わせる。筋力運動の負荷は慣れるに従い漸増していく。

(2)亜急性期(受傷後4~8週)

3週間後ぐらいから、膝の痛み、腫脹は消退し、それに伴い可動域も徐々に拡大していく。筋力運動は等尺性運動から可動域の範囲内でハーフスクワット、レッグエクステンション、レッグカール、ステップアップ運動、自転車運動など痛みと可動域増大に従って種目と負荷を増やしていく。また、ランニングもゆっくりとしたスピードから、徐々に開始していく。これらの運動後は必ずアイシングを励行する。

(3)慢性期(受傷後9~12週)

この時期の可動域は全域になり、日常生活動作では不自由がなくなる時期である。筋力運動はさらにバーベル、マシーンを用いた等張性筋力運動を押し進める。ランニングは全力疾走を目指し、スピード運動を行う。またジャンプ、着地、カット、スタート、捻りなどのアジリティー運動を開始する。この時期、膝伸展筋力は健側の80%以上が目標である。スポーツ復帰後も伸展筋力は健側の100%以上を目指して続行する。

(4)装具療法

PCL損傷の多くは急性炎症期が過ぎれば装具療法の適応となり、その目的は脛骨の後方移動を抑制し、早期の膝機能の回復である。PCL単独損傷はACL損傷に比べ、半月板損傷やOAを二次性に起こす頻度は低い。適切で迅速な装具療法は、筋力低下を最小とし、患者の早期の日常生活やスポーツ復帰も可能とする。急性期の症状(血症、腫脹、疼痛)の強い症例に対しては、装具による膝関節の伸展位固定を1~2週間行う。

(・_・;)参考文献

医療学習レポート.後十字靭帯損傷

 


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