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v(・∀・*)心筋梗塞の話


(ーー゛)題名:心筋梗塞の話

 

 

■概念と分類

●概念:冠状動脈硬化があり、狭くなった冠状動脈が粥腫(アテローム)の破綻により血栓を生じ、内腔が完全に閉塞すると、その動脈から先の血流が遮断される。このようなことが心筋におこると心筋は壊死をおこし、心筋細胞も破壊される。この状態が心筋梗塞である。心筋梗塞の急性期は、急性心筋梗塞(AMI)とよばれる。

●部位別分類:心筋壊死の部位および広がりによって、原因となった冠状動脈(責任動脈)と病型や重症度が異なるので、部位別に分類される。すなわち、閉塞の生ずる冠状動脈の灌流域によって、左室の前壁・前壁中隔・下壁(後壁)梗塞とよぶ。

心表面を走る冠状動脈主分岐の完全閉塞によって、心内膜層から心外膜層まで心室壁に塊状の壊死が生ずる場合を貫壁性梗塞とよび、病変部の心電図に典型的ST上昇と異常Qをみとめる。また、側副血行路のある場合や、細い冠状動脈の完全閉塞では、心内膜層を主病巣とする比較的小さな散在性の壊死を生じ、これを心内膜下梗塞(非貫壁性梗塞)とよぶ。心内膜下梗塞では、心電図上は病変部に異常Qをみとめないことが多く、non-Q梗塞ともよばれる。

心筋梗塞は重篤な疾患であり、死亡率が30%と非常に高い。多くは発作直後から12時間以内に死亡するので、この死亡率を下げる目的で各地に冠状動脈疾患の集中治療室である心臓集中治療室(CCU)が設けられている。心筋梗塞による死亡は、その合併症によるものであり、心筋梗塞による合併症が死亡率を高める原因として、心不全・ショック・重症不整脈(心室細動など)・心破裂があげられる。

また、閉塞部位によって重篤度がことなる。左冠状動脈主幹部にみられる閉塞は、心筋傷害の広がりが、枝分かれした前下行枝や左回旋枝の閉塞による心筋傷害の広がりよりも広く、重篤といえる。動脈硬化は一般的に男性の疾患であり、心筋梗塞についても同様のことがいえる。しかし女性でも、更年期以降では罹患する確立が上昇する。動脈硬化をおこしやすい冠状動脈は、血流により損傷されやすい動脈の分岐部、または鋭角に曲がっている部位におこる。これらの部位の動脈硬化がひどくなると、コレステロールが粥状化し、器質化として内腔を狭めると同時に、粥腫(アテローム)が破綻して血栓を作ると、完全閉塞を起こす。

 

■病態生理

心筋梗塞がおこると、梗塞による心筋細胞の壊死が心筋収縮能の低下を引き起こし、心拍出量の低下、左室の拡張終期圧の上昇をきたす。左房から左室への血液流入が障害されると、肺うっ血・低酸素血症をきたし、さらに心筋収縮能を低下させる。また拡張終期圧が上昇すると、冠灌流圧・冠血流量も低下し、心筋虚血をさらに助長して心筋収縮能をさらに低下させる。この一連の現象が心不全である。

また、心筋梗塞により心筋収縮能・心拍出量が低下すると、血圧が低下し、冠灌流圧も低下する。血圧の低下がおこると、反射的に末梢血管収縮がおこる。心拍出量が低下すると、末梢血管の灌流圧が低下し、末梢組織での代謝障害がおこり、アシドーシスがおこる。末梢循環障害を伴った心原性ショックである。

心筋梗塞による虚血部位からは、心室性期外収縮が出やすい。これがRonT現象をおこしたり、心室性頻拍をおこしやすく、心室細動から心停止をおこす危険をもたらす。

 

■症状

心筋梗塞の発作は、早朝から午前中に多い傾向にある。狭心症発作の経験を経て心筋梗塞をおこすことが多いが、なかには突然発作を起こすことがある。狭心症から心筋梗塞をおこしやすい徴候として、狭心症発作の頻度・強さ・持続時間が増す場合、つまり不安定狭心症があげられる。このような場合には入院治療が必要となる。

心筋梗塞は前胸部痛で始まる。胸骨中央部にえぐられるような痛み、重いものをのせられたような感じ、棒でかきむしられるような感じがあり、また左顎・左肩・腕・胃部に放散することもある。前胸部痛は、30分以上、数時間にわたって持続する。この胸痛は、ニトログリセリンを用いても軽快しないことが多い。高齢者や糖尿病患者では、痛みを感じない場合もあるので注意を要する。多くの場合、死への絶望感、強い不安を伴う。しばしば血圧は低下し、顔面蒼白・冷汗がみられ、脈は触れにくく、ショック症状が現れる。しばしば呼吸困難を訴え、肺には湿性ラ音が聞かれる。

これらの循環動態不全を示す所見から、重症度を判定する基準としてキリップ分類が広く用いられている。発病後数日間は不整脈をみとめ、軽度の発熱がある。

キリップ分類

クラス

症状

心不全の徴候なし

軽~中等度の心不全、肺ラ音聴取域<全肺野の50%

肺水腫、肺ラ音聴取域≧全肺野の50%

心原性ショック、血圧<90mmHg、尿量減少、冷たく湿った皮膚、チアノーゼ、意識障害

 

■検査

①心電図

梗塞部の誘導では、心電図の経時的変化が記録される。発作直後に、T波の増高またはST低下から上昇をみとめる。ST、Tの変化は比較的すみやかに生じ、数時間から数日持続する。貫壁性壊死が成立すると、その範囲の誘導に異常QまたはQSが見られる。心内膜下梗塞(non‐Q梗塞)ではQは現れず、STおよびTの変化も主として下降・陰転するが、まれにV1~V3がQSになり、あるいはR波が減高する場合がある。心電図にみられる変化でもう1つの重要な所見は不整脈であり、あらゆる不整脈がみられる。重症不整脈はただちに治療し、または予防する。

②逸脱酵素およびタンパク質

発作後上昇するものに、逸脱酵素のクレアチンキナーゼ(CK)・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)・乳酸脱水素酵素(LDH)、ヘムタンパク質のミオグロビン、収縮タンパク質のミオシン軽鎖Ⅰ(MLCI)がある。ミオグロビン、CK、MLCI、AST、LDHの順に上昇を示し、いずれも感度は高く、検査は容易である。特異性はCKのアイソザイムのうちCK‐MBが最も高く、MLCIも比較的高い。壊死量の推定には一般にCKが用いられるが、6時間ごとの測定が必要である。MLCIは感度もよく、1日1回の測定で壊死量を評価できる点がすぐれている。回復期の経過や梗塞部拡大の評価には、CKとミオグロビンの測定が用いられる。

③心筋梗塞かどうかの鑑別のための迅速簡易検査

胸痛で来院した患者で、心電図変化がはっきりしないが胸痛が消化しない場合、そのまま患者を打ちに帰すかどうか判断に迷う。このような場合、救急外来で簡単に測定できる検査法としてトロポニンT測定がある。簡易測定キットを外来においておけば、15分ほどで結果がでる。トロポニンTは、急性心筋梗塞では発症後3.5時間で上昇し、発症後7~10日にわたって上昇が持続するため、発症早期の場合でも、数日たった心筋梗塞でも、診断できるので便利である。

④核医学的検査

心筋梗塞急性期にテクネチウム99m-ピロリン酸を用いたシンチグラフィにより、心筋梗塞の部位診断が可能である。

⑤心エコー図

心エコー図検査では、発作後数時間以内でも左室壁運動の低下が認められることが多く、梗塞部位の左室壁運動低下、収縮期増大の消失、2~3日で非薄化がすすみ、大きな範囲の梗塞であれば、収縮期に外方に膨隆する心室瘤の所見がみられる。発作後数日後には、心膜炎による心嚢液貯留をみとめることがある。

⑥カテーテル検査と冠状動脈造影検査

右心系カテーテル検査により、心拍出量・右房圧・右室圧・肺動脈圧・肺動脈楔入圧(左房圧)を測定する。通常、スワン-ガンツカテーテルと熱希釈法が用いられ、血行動態の変化を監視するため、発作初期には持続的にカテーテルを留置して計測・監視する。とくに心不全では、この血行動態諸量を指標として治療する。

また、血栓溶解やダイレクトPTCAなどによる再灌流法が、急性心筋梗塞の早期治療として確立されたので、心筋梗塞の発作が疑われる例や発作数時間(以内)の例では、冠状動脈閉塞の有無と部位の確認のため、冠状動脈造影が行われる。冠状動脈閉塞部位は、一般に冠状動脈造影上の分節番号(#)で表示され、その狭窄度は%で示される。

近年、技術や器具の発達に伴い、緊急冠状動脈造影は、年齢にかかわらず行われるようになってきた。しかし、急性心筋梗塞の緊急カテーテル検査では、不整脈や血行動態の悪化などの急変がおこりやすいので、注意および対策が必要である。

 

■合併症

●不整脈:急性心筋梗塞の大部分にみとめられる。半数以上の症例で心室性期外収縮の頻発・連発がみられ、10~30%に心室頻拍または心室細動がおこるため、適切な治療が必要である。下壁梗塞では、洞停止・洞房ブロックおよび房室ブロックがしばしばみられ、ペースメーカー治療を必要とすることも多い。前壁梗塞では頻拍性不整脈が多い。発症から数日間は不整脈が頻発するが、徐々に出現しなくなる。心室性期外収縮の重症度分類には、ローン(ラウン)分類が用いられ、Ⅱ群以上が治療の対象になる。

●心不全:心不全はしばしばみられる。呼吸困難を伴ううっ血性心不全は、20~50%にみとめられる。心筋梗塞の大きさが左室心筋の40~50%を占めると、心不全・心原性ショックがおこりやすい。重症度の判定には、キリップ分類やフォレスター分類が有用である。下壁梗塞で右室梗塞を合併すると、肝腫大・浮腫などの右心不全症状を合併する。

●ショック:心筋梗塞の広がりが著しく、左心室筋の40~50%以上が壊死をおこすと、心原性ショックを合併する。また、心室中隔穿孔・急性僧帽弁逆流を伴った状態でおこりやすい。発生頻度は、急性心筋梗塞の10~15%、死亡率は60%以上であり、予後不良である。

●心膜炎:約20%の症例において、発作直後から1週間以内に心膜炎がみとめられるが、1週間以内によくなる。心エコー図や心膜摩擦音によって診断される。しかし、まれに心嚢液貯留が持続する例もある。

●心破裂と乳頭筋不全:発作後2週間以内に梗塞部に亀裂を生じて破裂するもので、高齢者や高血圧合併症例に多い。破裂部位は左室自由壁・心室中隔・乳頭筋であり、自由壁破裂は心タンポナーデをおこし、致死的である。心室中隔穿孔は左→右短絡を、乳頭筋断裂は僧帽弁逆流をおこし、心不全をおこす。

●再梗塞と梗塞後狭心症:安定した急性心筋梗塞では狭心症は消失するが、再び狭心症が出現し、梗塞部の拡大ないし再梗塞を生ずることがある。梗塞後狭心症は急性心筋梗塞の30~60%に生じ、とくにnon-Q梗塞に多い。発作時の心電図でST低下を示すものは、予後が悪い。

●心室瘤:心筋が梗塞によって壊死をきたし、心内膜・筋層にまで及ぶと心室瘤を形成し、心機能を阻害する。すなわち、収縮期に心室瘤の部分が拡張するという奇異運動をして、左室からの駆出量を低下させる。また心室性不整脈の原因となることが多い。

 

■治療

急性心筋梗塞に対する治療は、①初期診療における治療方針の判断と一般療法、②適応例に対する再灌流療法、③合併症の治療、④リハビリテーションの4段階にわけられる。

●初期治療:

心筋梗塞を疑わせる胸痛を訴える患者では、その経過をみながら心電図ですみやかに心筋梗塞の診断をつける。それは、発作後6時間以内であれば、再灌流療法が大きな効果を示すからである。そして6時間以内であれば、治療をしながら再灌流療法を行える病院にすみやかに搬送する。6時間以上経過していても胸痛が続いている場合には同様にする。なお、近年は急性心筋梗塞患者が病院に到着すると、すぐに心カテーテル検査室に移送し、冠状動脈造影を行うことが多くなった。

急性心筋梗塞に対する初期治療として、以下の治療が行われる。

①安静・鎮痛:精神的・身体的安静を保たせる。痛みの強い場合には、ニトログリセリン1~2錠の舌下投与、またはニトログリセリンの静脈内注射(静注)を試みる。静注の場合は血圧低下に注意する。胸痛がなおも続く場合には、モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬を少量ずつ静注する。初日の絶対安静から漸次安静を解除し、リハビリテーションに移行していく。

②酸素吸入:動脈血酸素分圧が70mmHg以下になると予後がわるいので、大部分の症例で酸素吸入を行う(2~4l/分)。しかしPaO2正常例では、酸素吸入は必要としない。心不全で呼吸困難を訴える場合には、気管挿管を考える。

③アトロピンの投与:迷走神経のため、吐き気・冷汗・徐脈・血圧低下を伴うことも少なくない。麻薬性鎮痛薬を用いた場合にも、アトロピン0.5mgを静注し、軽快しなければ追加する。アトロピンによる頻拍に注意する。

④致死的不整脈の予防:早期死亡の大部分が不整脈によるので、その予防が必要となる。搬送のためにはリドカイン1mg/kgを静注し、その後1~4mg/分の点滴を行う。

⑤静脈確保:緊急処置のため静脈路を確保する。肘正中皮静脈、または鎖骨下静脈を用いて中心静脈カテーテルを挿入する。輸液量は1日1000~1500ml程度とし、脱水やうっ血の程度を把握して調節する。血栓によるカテーテルの閉塞防止のため、少量のヘパリン(1000単位/l)を加えておく。必要な薬物は、それぞれ状況に応じて量を調節できるように、専用の輸液路を確保するのがよい。

⑥心電図持続監視:不整脈とSTの変動を中心に監視し、変化に応じて迅速に対処する。搬送中も監視し、対処できるようにする。

⑦食事:発症24時間までは口の渇きをうるおす程度の、エネルギーの少ない流動物を少量のみとし、2日目から消化がよく刺激のない軟食を少量ずつ何回かに分けてとるようにさせ、徐々に増量して数日で常食とする。ただし、梗塞の治癒を妨げないように、食塩制限・便秘予防を考え、タンパク質などで栄養を補い、エネルギーは1,500kcal/日以下とする。脂質異常症・肥満・糖尿病などの合併症がある場合には、それぞれの治療食を用いて退院後への習慣付けを心がける。

●再灌流療法:

再灌流療法としては、血栓溶解療法(血栓溶解薬の静脈内または冠状動脈内投与)および、経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)、冠状動脈バイパス術(CABG)がある。

①血栓溶解療法:血栓溶解薬を用いる場合、静注法(IVT)と経皮的冠状動脈内血栓溶解療法(PTCR)がある。薬物としては、ウロキナーゼ(UK)と組織型プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)があり、UKよりもt-PAのほうが再開通率は高いが、t-PAでも出血性合併症は少なくないので、特に高齢者には注意を払う。

血栓溶解療法の禁忌には、絶対的禁忌として、①10日以内の大手術・分娩・深部組織生検など、②近年の消化管出血、大きな外傷、③コントロール不良の重症高血圧(200/120mmHg以上)などである。

②緊急経皮経管冠状動脈形成術:緊急経皮経管冠状動脈形成術(PTCA)は、梗塞責任病変を経皮的に挿入したバルーンカテーテルで拡張するもので、血栓溶解療法に引き続いて非再開通や高度残存狭窄を拡張する場合(レスキューPTCA)と、最初から拡張する方法(ダイレクトPTCA)がある。PTCR後に残った狭窄に対し、引き続き緊急に行うPTCAは成績が必ずしもよくないので、設備や人員の整った病院ではダイレクトPTCAが主流となってきた。さらに、近年では、プライマリ-ステントとよばれる、急性期にバルーンによる冠状動脈閉塞部位の拡張と同時にステントを入れてしまう方法も普及してきた。

③冠状動脈バイパス術:急性心筋梗塞症例に対して、緊急冠状動脈バイパス術(CABG)を施行する機会は昔ほど見られなくはなったが、左冠状動脈主幹部病変例や、PTCAが困難な症例、多枝病変例などに行われる場合がある。

●合併症の治療:

①虚血心筋保護:心筋梗塞後の梗塞範囲の拡大を防止し、心筋障害を可逆的な状態にとどめておくための薬物による心筋保護法が注目され、治療に用いられている。心筋障部位の心筋酸素需要を減少させるために、β遮断薬・硝酸薬などが用いられている。

②不整脈:洞性徐脈・Ⅱ度房室ブロックにはアトロピン静注、また危険な心室性期外収縮(ローン分類のⅡ群以上)にはリドカインを静注し、持続点滴を行う。発作性心房細動・粗動、発作性上室性頻拍にはATP・ジソピラミドの静注または電気的除細動を行う。心室細動・心室頻拍、薬物治療抵抗性の心房粗動や細動には、電気的除細動を行う。アトロピン禁忌の著明な洞徐脈・洞停止、Ⅱ度以上の房室ブロックなどでは、一時的心臓ペーシングを行う。とくに下壁梗塞に房室ブロックを呈する症例が多いが、このブロックは通常1~2週間で回復する場合がほとんどである。

③心不全・ショック:原則として、スワン-ガンツカテーテル・膀胱留置カテーテルを挿入し、必要に応じて末梢動脈ラインを確保する。利尿薬(フロセミド)の静注が第一選択であるが、ジギタリス、血管拡張薬(ニトログリセリン・プラゾシン)、カテコールアミン(ドパミン・ドブタミン)を、血行動態所見(フォレスター分類)を参考にしながら使用する。

④心膜炎・心筋梗塞後症候群:心膜炎や心筋梗塞後症候群(ドレスラー症候群)には、インドメタシン50~75mg/日、アスピリン1~1.5g/日の投与、心筋梗塞後症候群の遷延性重症例では副腎皮質ステロイドの投与が行われる。

⑤心室瘤・乳頭筋断裂・心室中隔穿孔:心室瘤が心不全の原因、または重症不整脈の焦点となっている場合は、心室瘤切除を行う。また、乳頭筋断裂により僧帽弁閉鎖不全症(MR)をきたし、心不全を助長する場合は弁形成術または弁置換術を行う。また、心室中隔穿孔が循環不全の原因となっている場合は穿孔閉鎖手術を行う。

●リハビリテーション:

経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)による発症早期の再灌流療法が普及し、梗塞の範囲を最小限にくいとめられるようになり、心不全や重症不整脈などの重篤な合併症も減少してきたことにより、早期離床・早期退院が趨勢となってきている。これに伴い、早期にリハビリテーションが行われるようになってきた。

特別な合併症がなければ、入院翌日からプログラムにそったリハビリテーションが開始される。発症後3~4日ほどはCCUでも生活となるが、その後は一般病棟へ転床し、栄養士による栄養食事指導や、看護師による生活指導が行われるとともに、病棟での廊下歩行を中心としたリハビリテーションが行われる。その後、退院が近づいたならば、リハビリテーション室での歩行や自転車エルゴメータによるリハビリテーションに移行する。

運動負荷前後には心電図をとり、ST-Tの変化、不整脈の増加、胸痛発作、血圧低下などの変化のないことを確かめる必要がある。不整脈のある患者では、転棟後も無線による心電図監視が必要である。

転棟後は、定量的運動負荷試験(トレッドミル・エルゴメータ)を行うことにより、退院後の運動処方を決める。社会復帰に備えて、精神的なリハビリテーションも重要である。

●再発予防:

再発予防に関しては、まず生活習慣の改善が重要である。喫煙していた者は、禁煙すべきであるし、肥満の者は、標準体重を目標に減量する。また、精神的なストレスからも解放されることが望ましい。

このような生活習慣を改善したうえで、薬剤の内服へのコンプライアンスを高めることが必要である。再発予防効果のある薬剤はβ遮断薬であり、そのほか抗血小板薬であるアスピリンなどにも効果が期待されている。

 

■看護

心筋梗塞患者の入院から退院までの概要

(1)アセスメント

□症状と病態

心筋梗塞は、冠状動脈の閉塞あるいは高度の狭窄により、その支配領域の心筋が虚血をおこし、不可逆的な壊死に陥る疾患である。痛みは激烈であり、痛み自体が大きな心負荷となり、ショックをきたすこともある。多くの患者は死の恐怖を強く感じ、不安や不穏状態に陥る。その一方で、胸痛を伴わない場合もあり、歯痛や背部痛といった症状を訴える場合や、糖尿病患者や高齢者によっては、全く無痛で息切れなどの症状によって発見されることもあるため、注意を要する。

心筋梗塞発症後2時間くらいは、心室細動などの致死的な不整脈が出現しやすく、また急性心不全や心原性ショックなどの合併症を併発しやすい。この心不全・心原性ショック・不整脈は心筋梗塞の三大合併症であり、とくに発症直後の病院外致死率の高い重篤な合併症である。

□緊急時のチェックポイント

心筋梗塞の発症が疑われた場合は、診断・治療に一刻の猶予も許されない。病院外の場合は、救急車にて循環器専門病院への搬送をすみやかに行うことが重要であり、近年は、救急車から心電図が電送され、早期診断・早期治療が行われるようになった。

心筋梗塞の診断として用いられるものを以下に示すが、血液学的データ・心電図・心臓超音波検査により確定診断が得られ、治療が開始される。

(1)血液検査:CK、CK-MB、ミオシン軽鎖Ⅰ(MLCⅠ)、WBC、AST(GOT)、LDHの上昇

(2)心電図:STの上昇、不整脈の有無と種類

(3)心エコー検査:心電図上の虚血部位での心筋壁運動の低下

心筋梗塞発症後の三大合併症は、心不全・心原性ショック・不整脈であり、とくに心室性不整脈や、重篤な場合は心室細動などの危険な不整脈がおこりやすい。看護師は継続した心電図上の観察と、患者の状態の把握につとめる。バイタルサインや全身状態の観察と判断を総合的に経時的に行い、合併症や異常を早期発見し、救命に向けた対応を行っていくことが重要である。

□急性期のアセスメント

●自覚的症状:

(1)胸痛:発症時刻、痛みの性質、部位、持続時間、経時的変化、ニトログリセリンの効果の有無

(2)胸部痛以外の痛みの有無:放散痛(背部痛、歯痛、胃痛、左腕の疼痛)

(3)随伴症状:呼吸困難、吐き気・嘔吐など

●他覚的所見:前負荷・後負荷・収縮力の評価をする。

(1)バイタルサイン:①意識レベル、②血圧(左右)、③脈拍(心拍、四肢および頚動脈での触知)、④呼吸(チアノーゼの有無)、⑤体温(四肢の冷感および冷汗)

(2)心電図所見:心電図波形、心拍数、不整脈の有無、および種類・頻度

(3)血行動態モニタリング:中心静脈圧、スワン-ガンツカテーテルによるモニタリング

(4)パルスオキシメータ

(5)時間尿

(6)検査データ

①血液検査(CK、CK-MB、MLCⅠ、WBC、AST、LDH、動脈血ガス分析)

②心電図検査

③胸部X線所見

④冠状動脈血管造影(心臓カテーテル検査):発症直後では梗塞部位の特定に引き続き、PTCA、PTCR、ステント挿入術の、いずれか、あるいはその組み合わせが行われる場合がほとんどである。治療終了後、数週間~2ヵ月後に、冠状動脈での血行が維持されているのか確認のために、カテーテル検査が実施される。

⑤心エコー検査、心筋シンチグラム

(7)心理状態、不安のレベル

(8)家族の心筋梗塞および治療・処置に対する反応と理解・心理的状態

□回復期のアセスメント

生命の危険状態を脱し、回復期に向かったら日常生活の自立、再発予防の生活習慣確立への看護援助実施に向けて、以下の項目についてアセスメントを行っていく。

(1)心筋梗塞に対する受け止め方、治療への理解

(2)冠危険因子の有無と程度

(3)退院時に予測される身体機能の状態:血液学的検査、心エコー検査、心電図、運動負荷試験、確認カテーテル検査所見

(4)日常生活での再発の誘因

(5)家庭・職場での役割、職場での疾病への受け止め方

(6)自己管理能力

(7)対処機制

 

(2)看護目標

心筋梗塞は死亡率の高い疾患であり、迅速な治療による救命が必要である。近年は、再灌流療法の進歩に伴い、急性期の入院期間も短縮されている。CCU在室中から、動作や日常生活の活動を負荷としてリハビリテーションを開始するが、十分な監視のもとで安全に行っていくことが必要である。

患者の多くは発症時に死の恐怖に向き合い、心理的にも強い不安を持つ。家族が抱えている不安やとまどいも大きい。したがって、心理的な援助は、看護において重要な位置を占める。

心筋梗塞は、主として生活習慣に起因して発症する生活習慣病である。生命の危機を脱したら、再発防止に向けての知識が獲得できるように教育的アセスメントを行い、患者の回復状況や理解力・疲労度を注意深く確認しながら患者教育を実施していく。

●急性期の看護目標:心筋梗塞発症時の急性期には以下の目標があげられる。

(1)救命と適切な環境の維持がなされる。

(2)心不全、不整脈、心破裂などの心筋梗塞後合併症が起こらない。

(3)心筋梗塞による身体的苦痛が緩和する。

(4)心筋梗塞による心理的な不安が緩和する。

(5)急性期治療下での安静に伴う心身の障害が予防される。

●回復期の看護目標:生命の危機を脱し、回復期に向かうと以下の目標についても看護を展開する。

(1)安全で確実に身体活動性の拡大が行える。

(2)冠危険因子と是正の必要性について知る。

(3)再発を予防する生活習慣への修正に取り組める。

(4)心身ともに自信をもって社会復帰が行える。

 

(3)看護活動

●救命のための看護活動:

CCUにおける救命への看護活動では、医師や臨床工学技士とのチームワークが重要であり、心筋梗塞発症に伴う治療・処置とその目的・方法を理解し、実施できることが求められる。CCUに勤務する看護師は、専門的な知識と判断力、的確な臨床看護実践能力が求められる。

□胸痛・呼吸困難などの苦痛の軽減

●胸痛の軽減:

冠血流量の絶対的不足あるいは遮断により、心筋の虚血・壊死がおこると、嫌気性代謝物質が蓄積し、激痛を起こす。心筋梗塞における胸痛は激烈で、胸をえぐられた、ドンとする、火箸をあてられたようだと表現するような強い痛みであるが、歯痛や胃痛のような放散痛の場合や、糖尿病合併患者や高齢者では、胸の不快感がない場合やまったく無痛のこともある。どのような胸痛を訴えているか、歯痛や胃痛などの放散痛としてあらわれていないかを注意深く観察する。強い胸痛は不安を起こし、不安は心筋虚血を増強するという悪循環をもたらす。

胸痛軽減のためには、塩酸モルヒネ(アンペック)が最も有効であり、静脈内注射で投与される。また、ブプレノルフィン(レペタン)が用いられる場合もある。

血圧が保たれていれば、硝酸薬であるニトログリセリンが舌下投与される。胸痛が強い場合や高齢者などでは、口腔が乾燥して舌下錠が容易に解けない場合もあり、硝酸薬スプレーの口腔内噴霧も行われる。ただしシルデナフィル(バイアグラ)服用中患者では、過度な血圧低下から心筋虚血を誘発するおそれがあり禁忌とされている。

不安は胸痛を強めるので、鎮静薬としてジアゼパム(セルシン)が投与されることがある。鎮痛薬・鎮静薬を投与した場合には、その効果を評価する。これらは中枢抑制作用をもたらすので、血圧低下や呼吸抑制に注意する。

●呼吸困難の緩和:

心筋梗塞でおこる呼吸困難は、おもに急性左心不全に伴う症状である。発症直後の患者では、ほぼ全例で酸素投与を行うが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併している患者では、CO2ナルコーシスに陥る危険性があり、動脈血ガス分析の結果や、呼吸状態に注意する。また重度の呼吸困難の場合には、気管挿管を行い、人工呼吸器管理を行う場合もありうる。酸素吸入を効果的に行い、呼吸困難時には心不全の呼吸困難の緩和方法を適用してケアを行う。

□合併症の予防と早期発見・対処

●心筋の酸素消費量を増す因子の軽減:

梗塞の範囲が広がるほど、合併症である不整脈・心不全・心原性ショックが発症する頻度は高くなる。心筋梗塞発症直後の心筋が炎症期にあり、心筋線維の断裂や変性をきたしており、過剰な負荷によりこれらの合併症や心破裂をきたしやすい。冠血流量を保ち、梗塞範囲の拡大を防止することが重要である。

心臓の仕事量を規定する因子は、心筋の収縮性と血圧と心拍数である。冠状動脈は心臓自体を栄養する血管であり、心臓の収縮期には冠状動脈の血流は減少し、拡張期に冠血流量は増加する。心臓の仕事量がふえると、冠状動脈の血流は増加し、心筋酸素消費量が増加する。

心拍数を増加させ血圧を上げるような動作や、怒りやストレス、不安などの情動反応、激しい疼痛などは心筋酸素消費量の増加をもたらし、心臓への負担となる。虚血心筋を保護し、心筋壊死範囲の拡大を防止するためには、とくに急性期においては、これらの因子をコントロールしていくことが重要となってくる。

●酸素吸入:

急性期には虚血心筋を保護し、壊死の拡大を抑制するために、全例に酸素吸入を行う。通常は経鼻カニューレ、またはフェイスマスクにより開始する。場合によっては、気管挿管が必要とされ、人工呼吸器の適応となる。

●発作直後の安静の維持:

心筋梗塞の治癒過程では、壊死部の分解・吸収・線維化という治癒過程をたどる。発症直後の心筋は、過度の負荷により心筋の断裂や変性をきたしやすい。さらに、血圧や心拍数の上昇は心筋酸素消費量を増大させ、心仕事量の増大は梗塞範囲の拡大、あるいは再梗塞、さらに壊死部の治癒過程に影響を及ぼす。そのため発症直後は絶対安静が指示される。

体位変換・排泄・洗面などの日常生活の諸動作は、心負荷となる要素であるため、これらの動作に対する援助を行う。食事も摂取・消化に伴う心負荷を避けるために絶食となる。全身清拭も医師の指示に従う。

近年は、長期臥床にともなう心身への影響が指摘されたことや、さらに血行再建術や薬剤の進歩により、絶対的安静期間は短縮されている。絶対安静は、患者や家族にとって、心身ともに大きな不安をもたらす。また患者によっては、日常生活動作のすべてを依存することに遠慮することもある。看護師は、患者に安静の必要性をよく説明し、安静を保つことが治療の1つであることを理解させる。

●輸液の管理:

急性心筋梗塞患者には、四肢末梢の静脈、または中心静脈などの静脈路の確保がおこなわれる。硝酸薬の投与など、さまざまな薬物療法に加え、状態の変化にあわせ、緊急薬剤の投与を必要とする場合が多い。投与される薬剤の使用目的と効果を理解し、指示通りの量、および時間投与量を管理する。輸液量が多すぎると、心負荷となる。通常は自動輸液ポンプを使用して投与されるが、水分出納量・時間尿・中心静脈圧などをつねに観察し、全身状態の把握を行いながら輸液の管理を行う。

●再梗塞の防止:

心筋梗塞発症時に、冠状動脈を閉塞して心筋壊死にいたらしめる原因として血栓症があげられる。血栓をできるだけ早期に溶解し、壊死にいたっていない心筋を保護し、梗塞を可能なかぎり縮小し、治癒過程の促進や不整脈を防止することなどを目的として、発症直後の時期に血栓溶解療法が行われることがある。組織型プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)やウロキナーゼなどの血栓溶解薬の冠状動脈内投与、あるいは静脈内注射による投与を行う。

また、血栓の形成を抑制するため、血栓形成の基盤となる血小板の粘着や凝集抑制作用のある抗血小板薬(アスピリンなど)の経口薬投与がおこなわれる。血栓性の合併症が予測される場合などには、ワルファリン(ワーファリン)の投与が行われる。ワルファリンは、抗ビタミンK作用を持ち、プロトロンビンなどの血液凝固因子の合成を阻害するため、血栓抑制作用がある。ワルファリン投与時は、歯肉・口腔粘膜からの出血や皮下出血などの出血傾向に注意する。また、納豆はワルファリンと拮抗作用があるため禁止する。

●三大合併症の予防:

前途したように、心筋梗塞の三大合併症は不整脈・心原性ショック・心不全である。とくに心筋梗塞発症後2~3時間は、心室頻拍・心室細動などの重症不整脈を生じやすく、高度の緊急処置が行えるCCUに早期に搬送されることが重要である。心室性不整脈(心室頻拍など)の出現に対して、プルキンエ線維の興奮性を低下させ、心室細動の閾値を上昇させる作用をもつ抗不整脈薬、リドカイン(キシロカイン)の静注も考慮される。

また、心不全や心原性ショックも早期の対応が必要である。肺野の湿性ラ音の有無を確認し、尿量の測定には留置膀胱カテーテルの挿入による時間尿測定と、水分出納を確認する。

心不全の重症度を把握する指標として、フォレスター分類があげられる。全身的なモニタリングによる経時的な観察とともに、四肢の冷感、冷汗、血圧の下降、頻脈、時間尿の減少など、ショック徴候の有無についても確認する。CCUには24時間の心電図などの監視体制、直流式除細動器、ペーシング機器、緊急薬剤を完備され、すぐに使用できる環境となっている。

□安静度に応じた日常生活への援助

洗面・食事・排泄・清潔・体動などの日常生活動作も心負荷となるので、発作初期には患者の状態に応じて援助する。梗塞の範囲や合併症の状態に応じて、医師から暗制度の指示が出される。この指示に基づいて援助を行うが、動作に応じた心負荷の状態を、心電図モニターからの心拍数や血圧の変動や、息切れなどの自覚症状の有無から評価し、段階的に進めていく。

●食事:

発作当日は、原則として水分以外の摂取は禁止されるが、段階を追って固形食へと進められる。しかし、塩分や摂取エネルギー、必要時には水分が制限される。摂取食品の温度が冷たすぎると不整脈の誘因になるため、氷水を避けるなどの注意をする。食事の体位は、ベッド挙上角度の許可に応じて食べやすい体位とし、食事介助は患者の状況に応じて行う。

食事そのものに対する心負荷を考慮して、食後は1時間くらい休息をとり、その後にケアを行う。

●排泄:

胸痛に対してモルヒネを使用した場合は、腸の蠕動運動が抑制され、便秘傾向に陥りやすい。また治療目的で指示される安静状態も便秘を助長する。努責は胸腔内圧を高め、一過性に冠血流量に変動をもたらし、また心仕事量を増すため、便通のコントロールが重要となる。緩下剤の投与によって排泄に負担のかからないように管理が行われるが、排泄方法も余分な心負荷が加わらないように、努責せずに排便できるよう体位を工夫する。

●身体活動性の拡大:

絶対安静の時期におこしやすい二次的障害として、肺合併症や自律性神経反射の低下による起立性低血圧、静脈血栓症があげられる。早期離床ではこれらの障害を予防するためにも重要である。心電図のモニタリング下で、臥床から起座位・立位・歩行へと各動作での安全を確認しながら、身体活動性の拡大を行っていく。

●心理的な援助:

ストレスの緩和も重要である。心筋梗塞による梗塞感、機材に囲まれたストレスの多い環境から、せん妄状態を呈することもある。さらにこれらのストレスや抗凝固薬の投与など、さまざまな要因がからみあい、身体症状をもたらす場合がある。たとえば、潰瘍を引き起こし、上部消化管出血を起こす場合もある。

患者の多くは、強い胸痛や息苦しさ、意識混濁など、発症に伴い、死の恐怖と向き合う。その後、CCUで機器に取り囲まれて24時間監視される環境におかれる。拘禁状態やCCUにおける単調な音、明かりなどの感覚過負荷は、患者にとって強度の心理的なストレスをもたらす。

●患者への接し方:

心筋梗塞患者に対して、このようにさまざまな援助が行われるが、患者に対して説明が必要となることも多い。以下の点に注意して、患者に説明し、ストレスを軽減することが重要である。

(1)おかれている状況や行われる治療・処置について説明する:緊急時には簡潔にCCUの特徴と目的を説明する。さらに現在の心筋梗塞の状態が医師から説明され、その後、患者の理解のレベルに応じて順次説明をしていく。このとき大切なことは、今後の見通しと希望を伝えることである。行われる治療・処置についても簡潔に目的と方法を説明する。もし患者が質問するようであれば、その質問にはていねいに答える。

(2)おだやかな自信のある態度でケアを行う:緊急事態下でおだやかさを保つには、経験と状況判断の能力が要求される。患者が医療者の態度によって影響を受けることは事実であり、この事実に気付くことによって態度を改める努力は可能である。治療・処置のみに専念しがちであるが、患者の腕や手に触れるなど、患者を見守るゆとりを保つことが求められる。

(3)感情表出を促し、患者が感じていることを受け止める:患者は、死に対する不安をさまざまな言葉で表現することがある。感じていることを訴えようとしているときは、耳を傾けて感情表出を促す。そして患者が示すこれらの感情はそのまま受け止め、そのように感じるのは当然であることをみとめる。患者によっては、自分の状態を楽観視したり、あるいは否認したりすることもある。不安状況でみとめられるこのような防衛反応に対して、それを否定したり、納得させようと理論的に説明したりすることは逆効果となるため、しばらくは見守るようにする。

(4)患者を支える家族や重要な人とのかかわりをもつ:患者にとって家族は心理的な支えとして重要な人である。面会時間も家族の状況に応じて考慮すべきである。構造上あるいは病院の管理上困難な場合も多いが、患者や家族のことを考えると、必要ならCCUにおいても付き添えるように配慮すべきである。また、家族が望むときには、患者のケアに参加させる。

●家族への援助:

心筋梗塞は突然に発症し、生命に重篤な危機をもたらす疾患であり、家族は治療や状態について説明を受ける際に、生命の危機的状況であることを告げられる。家族に与える心理的な影響は大きく、家族もまた危機に陥る。看護師は家族の不安に向き合い、患者の状態とCCUの目的や特徴、行われる治療と今後の見通しについて十分に説明し、質問に答える。

家族の感情表出を促し、それらの感情を受けとめ、支持する。なによりも家族を支える行為は患者へのきめこまやかなケアであり、家族のつらさを受け止める配慮と、家族の思いに耳を傾ける態度である。

 

■心電図について

◎心筋梗塞で示される典型的な心電図変化

急性心筋梗塞では、「梗塞曲線」と呼ばれる特徴的な心電図波形が示されている。

①異常Q波:幅が0.04秒以上、深さがR波の1/4以上の場合を、異常Q波とよぶ。心筋壊死を現す。

②ST上昇:R波下降脚の途中から、上方に凸のST部分の上昇がみられる。心筋傷害を現す。

③冠性T波:左右対称性の陰性T波で、先端は先鋭化している。心筋虚血を現す。

 

◎発症経過による心電図変化

・典型的な「梗塞曲線」は、発症数時間を経過し、心筋壊死が生じた場合に示される。

・発症後のごく早期(超急性期)には、心電図変化から急性心筋梗塞を診断することが困難な場合も少なくない。

・数年を経過した慢性期には、判別が不可能なこともある。

a)超急性期

・次の心電図変化は、一過性の心内膜下心筋虚血の反映だが、捉えられることはまれである。

①盆状ST下降

②T波の陰性化

③高尖性T波

b)急性期

・虚血巣の周囲に傷害電波が生じ、ST部分が上昇しはじめ、その極期に最大に達する

・梗塞巣の中心部に心筋壊死が生じた場合には、q波、Q波、異常Q波が形成される。ST部分は次第に減高し、冠性T波を形成する

①異常Q波

②ST上昇

③冠性T波

c)亜急性期

・次の変化は、梗塞に伴う心筋絵師の拡大、心筋障害の軽減、心内膜下虚血の残存を表す。

①異常Q波の増大

②ST上昇の軽減

③冠性T波の増大

*臨床的には、1ヶ月までの心筋梗塞を「急性」と総称するが、ここでは心電図の経過を示す意味で、亜急性期とした。

d)慢性期

・前壁梗塞では、異常Q波が年余にわたり存続するが、下壁梗塞では数ヶ月後にQ波の減少が示され、数年後には判別が不可能なまでに回復する場合もある。

・ST部分は正常化することが多いが、ST上昇が持続する際には、心室瘤の形成を考慮する。

・冠性T波は減少し、時に正常化する。

①異常Q波の軽減

②ST上昇の正常化

③冠性T波の軽減と正常化

(・_・;)参考文献

医療学習レポート.心筋梗塞


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