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( v^-゜)♪脊髄損傷の話


「脊髄損傷」の画像検索結果

(^O^)題名:脊髄損傷の話

1.頚髄損傷の概要

頚髄損傷は、麻痺高位により、四肢麻痺を呈する。発生原因は第1位が交通事故、第2位が転落、第3位が転倒によるものである。麻痺高位は頚髄損傷が約75%、胸・腰髄損傷が約25%であり、3倍になっている。好発部位は中下位頚椎(c3-7)で、受傷年齢は20歳―60歳にピークがあり、近年は、高齢者において転倒などの比較的軽微な外傷でおこる頚髄損傷が増加している。また、単純X線像上の骨傷の有無は、骨傷あり34.9%、なし55.8%、不明9.3%で、骨傷のない例が半数を占めている。

 

2.完全麻痺と不完全麻痺

1)完全麻痺

損傷部以下の運動、知覚とも完全に麻痺し、最下位仙髄節S4-5の運動と知覚機能が完全喪失したものである。

2)不完全麻痺

①中心性頚髄損傷

高齢者に多く、軽微な外力で発生、頚部の過伸展により受傷、不全四肢麻痺(運動麻痺が主、下肢よりも上肢運動麻痺が強い、特に手の巧緻運動障害、知覚麻痺は軽度)、骨傷が明らかでない、第5髄節以下の麻痺が多く、予後は必ずしも良好でないという特徴がある。

②前脊髄損傷

前脊髄動脈の圧迫で、脊髄の前方の部分への循環障害が起こる。損傷部以下の運動麻痺と温痛覚障害を認められ、深部知覚・触覚は保たれる。

③Brown-Sequard症候群

脊髄の片側が損傷されたもので、損傷側の運動麻痺と深部知覚障害、反体側の温・痛覚障害がある。触覚は両側において保たれる。損傷側の損傷レベルには全知覚障害がある。

④後脊髄損傷

後索だけが障害されたもので損傷部以下の深部知覚・触覚の障害が主。

 

3.脊髄ショック

脊髄ショックは、脳から脊髄へ通じる運動や知覚の伝導路が遮断されることにより生じるもので数日から数週間持続し、受傷部以下の腱反射、排尿筋反射、血管運動反射など、すべての反射が消失し、完全弛緩麻痺、膀胱反射の消失による完全尿閉となる。また、内臓運動反射、直腸反射の消失による腸管蠕動運動不全による便秘や損傷レベル以下の血管の拡張が起こり血圧降下を生じる。頚髄損傷時に著明で、様々の合併症を生じやすい。

 

4.随伴症状

1)痙性

上位中枢による抑制からの解放により、脊髄ショックの回復とともに損傷髄節以下の反射弓の亢進によって出現し、頚髄損傷は腰・仙髄損傷より痙性が強い。下肢に強く、体幹、上肢に弱いことが多く、抹消神経である馬尾神経損傷では完全弛緩麻痺となり、痙性の出現は認められない。完全麻痺よりも不完全麻痺に強く認められる例が多い。自律神経系刺激や不適切な装具や衣類の材質に敏感なので、訓練は排便、排尿後に施行するのが望ましい。

2)膀胱障害

脊髄ショック期に尿閉がおこり、排尿反射消失し、尿意がなくなる。よって、排尿は自己導尿、介助導尿で行う。膀胱合併症には、尿路感染症、膀胱尿管逆流現象、腎不全、尿失禁、尿路結石症がある。

3)排便障害

初期には軟便か泥状便であるが、のちに結腸と直腸の麻痺のため蠕動運動が弱くなり便秘となる。排便においては、S・E・L・Fの原則にちなんで行われる。

Schedule:規則正しい排便の習慣

Exercise:腸の蠕動運動を促進するような運動

LIquid  :バランス良い水分摂取

Food    :食事

排便方法のゴールは

C5レベル以上:ベッド上仰臥位、介助を要する

C6レベル  :トイレッタブル

C7レベル以下:身障者用トイレが望ましい

4)呼吸障害

肺活量の低下、1回換気量の低下、予備呼気量の低下、咳漱力低下、残気量の増加がおこる。強制呼気 郡である腹筋郡と内肋間筋の麻痺による拘束性障害となる。特に、横隔膜 (C3-5)が麻痺すれば自発呼吸困難となり、人工呼吸器が必要となる。また、急性期では呼吸率の悪いシーソー型呼吸が多く見られる。これらの呼吸障害に、頚部安静のための体位交換困難、副交感神経優位による気道内分泌物貯留や抹消気道収縮などがおこると、肺炎や無気肺などの合併をおこしやすい。肺合併予防のためには早期離床、ネブライザー、IPPB、が重要であり、肺活量が500ml以下であれば気管切開を考える必要がある。また、座位では腹筋麻痺による横隔膜の可動域減少が換気量の減少につながるため、腹帯の使用が有効である。逆に、腹部膨満による横隔膜の可動域減少が、換気量の減少につながる例もある。呼吸器合併症には、呼吸不全、気道閉塞、肺炎、気管支炎、無気肺、肺水腫、肺塞栓、受傷時の胸郭、肺合併損傷がある。

5)自律神経障害

①自律神経過反射

麻痺域の刺激により、血圧上昇を主とする症状が現れる。誘発刺激として、膀胱壁・直腸壁への拡張刺激、褥創・術創への刺激があり、発作性血圧上昇、顔面紅潮、頭痛、発汗、鼻閉、鳥肌、立毛、皮膚温低下、嘔吐、除脈といった症状が現れる。ADLでは自律神経過反射の症状を排便・排尿のサインとして活用することもできる。

②起立性低血圧

血圧調整機構が傷害されており、腹部、下肢への血液貯留により起こる。血圧低下、顔面蒼白、冷汗、生あくび、頻脈、失神といった症状が生じる。

③体温調節障害

頭部を含めた全身の汗腺はTh1-12で支配している。麻痺域の発汗低下、停止などによる放熱障害でうつ熱を生じやすい。対応として、室温の調節や衣類に調節を行う。

④皮膚変化

血管運動、皮膚栄養神経の麻痺などといった自律神経障害の関与が大きい。受傷2-3週間後に手指や下肢に出現し、回復すると浮腫は軽減、光沢が茶褐色に変色する、塗瑚状浮腫が現れる。爪の栄養障害によるまき爪変形などを合併することがあり、回復期には皮膚が乾燥し、ひび割れすることがある。ポジションニングにおける手指、足指浮腫予防や手指、踵、足指を清潔に保つことが重要である。

6)性機能障害

男性では勃起・射精障害がおこる。現在では精子を取り出して人口受精で子供を生む例も多い。女性では生理があり、妊娠、出産は可能である。

 

5.合併症

1)褥創

麻痺域血流不全、皮膚栄養神経麻痺、知覚障害、自己体動の限界で発生。脊髄損傷における好発部位は仙骨部、踵部、大転子部、第5中足骨頭部ないし基部など、皮下組織が少ない骨隆起部である。特に脊髄ショックにより血管運動反射が回復していない時期は発生しやすい。褥創の四大因子として①麻痺・圧迫②不潔③湿潤④栄養障害があげられる。予防が第1で、鏡などで観察することなど自己管理に努めて、定期的除圧、皮膚の清潔・乾燥をしなければならない。

2)異所性骨化

解剖学的に骨が存在してはならない部分の新生骨形成現象で、発症部位は股関節、次いで膝関節に多く、左右対称に発生することが多い。高位頚髄損傷では肘関節、肩関節に認められることもある。受傷後1-4ヶ月ころ多く発症し、発症後1年ぐらいで発生停止する。PTの過度なROM運動が誘因との説もある。発赤、腫脹、熱感、腫瘤。ROM制限の症状が生じる。

3)静脈血栓

下肢骨格筋麻痺と血管運動神経麻痺により筋ポンプ作用の低下が起こる。さらに下腿部の圧迫などにより静脈うっ帯を起こし静脈血栓の原因となる。中年、肥満、女性、完全麻痺では特に注意が必要である。いったん起こると肺塞栓による致死率が高く、理学療法は中止する。予防策として、下肢の高挙、他動・自動運動、弾性ストッキング、弾性包帯の利用が有効である。

4)浮腫

頚損は手指に浮腫が好発し、MP、PIP関節に拘縮きたす。愛護的他動運動や手指、下肢の挙上位を施行する。

5)骨萎縮と麻痺肢骨折

骨代謝異常により骨脱灰化を起こし骨萎縮となる。尿路感染、創傷感染、腎機能低下が合併すると進行し、腰椎、骨盤、下肢骨、頚損では手指にも発生する。骨折は歩行練習中の転倒、車椅子からの転落、粗暴なROM運動などで発生する。

6)疼痛

早期の疼痛は損傷脊椎の疼痛や神経根性疼痛が多い。慢性期疼痛は損傷境界部に帯状痛を呈する神経根性疼痛や交感神経性疼痛が代表的である。天候、精神的、尿路感染、便秘、発熱などの因子で影響される。

7)変形・拘縮

損傷レベルによる残存筋のアンバランスや不動化により、特有の変形拘縮を起こしやすい。

C4レベル:肩甲骨挙上

C5レベル:肩甲骨挙上、肩関節外転位、肘関節屈曲位、前腕回外位

C6レベル:肩関節外移・外旋、肘関節屈曲位、前腕回外位、手関節背屈位、手指屈曲位

(MP関節伸転位、PIP関節・DIP関節屈曲位)

C7レベル:手指伸展位

に変形・拘縮を生じやすい。

原因として、不適当なポジションニング、合併症などで規則的他動運動が妨げられたり、誤った運動療法や自己管理の怠慢があげられる。

8)肩手症候群

外傷後の交感神経機能障害である反射性交感神経性ジストロフィーの中の肩手症候群は中高年の頚髄損傷者に多い。症状は両上肢での疼痛、腫脹、皮膚の色調不良、関節拘縮である。特に、高齢の頚髄損傷者においては予後が悪く、重度の関節拘縮が肩関節や手指に起こる例もある。

9)外傷後脊髄空洞症

受傷後一定期間が経過した後、脊髄内に髄液が侵入して形成される。損傷部での癒着による髄液還流の傷害が原因とされる。空洞が形成されている症例は多くあるが、直接原因となって麻痺症状が出現する例は少ない。麻痺は疼痛およびしびれで発症し、時間経過とともに痛覚の低下、筋力低下、筋萎縮などの麻痺症状が出現してくる。発生頻度は外傷性脊髄損傷の2-3%以上である。

 

6.レベル別の概要

1)C3レベル

主動筋は胸鎖乳突筋であり、上肢帯の運動は全くない。横隔膜は主にC4で機能するため自発呼吸はなく、人工呼吸器による管理となる。舌咽呼吸により意識覚醒時のみ自発呼吸可能となる例もあるが、睡眠時は人工呼吸器による管理となる。

2)C4レベル

急性期には人工呼吸器管理も多いが、回復期には必要ない。主動筋である僧帽筋の挙上が可能となる。この動作は補助呼吸として有効である。そのため、拘縮予防として肩甲帯の挙上に注意する。

3)C5レベル

主動筋として三角筋、上腕二頭筋が機能し、手動による電動車椅子操作が可能となる。また、Zancolliの分類におけるC5Bでは平地車椅子駆動が可能となるが、実用的には電動車椅子である。プラットホームなど滑りの良い所では前方移動可能となる例もある。自助具食事動作、整容動作などは、装着などの一部介助で可能となる。上腕二頭筋筋力が2または3の場合にはBFOを用いる。拘縮予防として肩甲帯の挙上および肘関節屈曲拘縮に注意する。

4)C6レベル

主動筋として撓側手根伸筋が機能し、手関節背屈が可能となる。大胸筋も機能し始め、諸動作において重要な肩周囲筋力が強くなる。Zancolliの分類におけるC6A、C6B1において「ベッド・車椅子間」のトランスファーが可能または一部介助となり、C6B1とC6B2では自動車の運転およびトランスファーが可能、C6B2、C6B3では様々の自助具と環境整備によりADLがほぼ自立する。しかし、退院後の家庭では入浴、排尿、衣服着脱において時間と労力を要すため、多くの例で一部介助してもらっているのが実状である。また、中高齢者や女性では若い男性と比較してADL能力は劣る例が多い。

C6レベルはADL自立の境界レベルである。特に、肘の屈曲拘縮がおこると上腕三頭筋が機能しないため、肘ロックが不可能となり、多くの動作で支障をきたすので注意が必要である。

5)C7レベル

主動筋として、上腕三頭筋、撓側手根屈筋、総指伸筋が機能し、大胸筋よりも強くなる。高齢者を除く多くの例で起き上がり、トランスファーが可能となり、環境整備にADLが自立する。一人で生活を送る例もある。

6)C8レベル

ほとんどの上肢動作は可能となるが、手内筋は機能していないため巧緻動作に問題がある。

 

7.非骨傷性頚髄損傷

外傷により、X線上明らかな骨折や脱臼を認めないにも関わらず頚髄損傷を発することがある。麻痺発現には受傷前より存在する脊柱管狭窄が重要な背景となるため、加齢に伴う頚髄変性疾患をすでに有する中高齢者に好発する。既存の脊柱管狭窄因子として、先天的な脊柱管狭窄症、後天的な頚椎症性変化、後縦靭帯骨化症などが挙げられる。圧迫を受けていた、あるいは先天的に狭い脊柱管におさめられた脊髄は易損性が高く、転倒など軽微な外傷でも麻痺を発現する。受傷時作用する外力の方向は過伸展が多いが、すべてではない。

本症の臨床像の特徴は

①X線にて頚髄の脱臼・骨折を認めない。

②過伸展損傷を受傷機転とすることが多い。

③加齢に伴う頚椎変性疾患をすでに有する中高齢者に好発する。

④頚髄横断面における傷害領域は中心部損傷となる頻度が高い。

⑤麻痺の回復は下肢・上肢の順に見られ、手指が最も遅れる。

脊髄の損傷機序として、①頚椎伸展時における黄色靭帯の脊柱管内膨隆と、骨棘などの前方圧迫因子との間で脊髄が挟撃される。②過伸展力によって前縦靭帯、椎間板が断裂し椎意体の前方開大、あるいは後方すべりが起こり、脊髄が損傷されるが、転位は自然整復される、などの説がある。中心損傷となることが多いので麻痺は上肢優位となる。麻痺の回復は下肢・上肢の順にみられ、手指の障害は最後まで残存する。脊髄損傷の高位、程度を診断するにはMRIが有用である。損傷高位はC3/4椎間が多く急性期にはT2強調像で高信号となる。慢性期にはT1強調像でスッポト状の低信号領域が出現し、その領域が広いほど脊髄損傷程度は大きい。受傷当初は砂嚢や頭蓋直達牽引を用いて頚部の安静を厳重に保つ。保存療法を選択するならば最長4週の安静臥位の後、頚椎カラーを装着して離床する。

 

●評価項目

1.急性期の診断と評価

(1)診断:脊髄損傷は受傷時にspinal shockなど、多彩な症状を示すが、全身的には以下の項目についてチェックする。

①バイタルサイン

ⅰ)意識状態、ⅱ)呼吸、ⅲ)心血管系[低血圧・徐脈・電解質異常]、ⅳ)排尿・排便[In/Outのバランス]

②神経学的評価

ⅰ)運動[横隔膜・肛門括約筋も必ず評価]

ⅱ)感覚[light touch,pin prick,position]

ⅲ)反射:重要な反射とその支配レベル(表1)

ⅳ)自律神経機能

③損傷脊椎の動揺性

支持性・安定性の確保→体幹装具・安静等の保存的治療、手術。

主な反射および支配レベル

       深部反射 表在反射
・ 二頭筋反射     C5.C6

・ 腕橈骨筋反射    C5.C6

・ 三頭筋反射     C6~C8

・ 膝蓋健反射     L2~L4

・ アキレス腱反射   L5~S2

・     上腹壁反射     T5~T9

・     腹壁反射      T10~T12

・     挙睾筋反射     L1~L2

・     足底反射      L5~S2

・     肛門反射      S3~S5

(2)検査

①X線[脊柱・胸腹部X線・その他必要に応じて撮影する]

ⅰ)多発外傷を伴っていることが多いので注意する。

ⅱ)各椎体のアライメント・変形・骨折

a)安定型骨折[圧迫骨折・粉砕骨折]

b)不安定型骨折[脱臼骨折]

ⅲ)脊柱管の径、ⅳ)OPLL、ⅴ)異所性骨化の早期診断、ⅵ)胸部Ⅹ線、ⅶ)腹部Ⅹ線

②CT CTmyelogram

骨折・脊柱管内への圧迫・変形の程度。

③MRI[Ⅹ線・CTでは損傷高位がわからない例にも有効となる]

椎体の脱臼骨折、脊髄の狭窄・変形・浮腫・出血・梗塞所見を診断。初期のMRI像で出血のある例は予後不良である。

④呼吸

ⅰ)スパイロメーター、ⅱ)血液ガス分析

⑤泌尿器系検査

ⅰ)検尿と尿培養、ⅱ)腎機能[クレアチニン・クリアランス、血清β2‐microglobulin等]

ⅲ)ウロダイナミック検査、ⅳ)尿路造影

尿路感染・DSD(利尿筋括約筋協調不全)の有無、膀胱容量、膀胱内圧、VUR(膀胱尿管逆流)、水腎症、結石をチェックする。

⑥電気生理学的検査

ⅰ)EMG(損傷部位の前角細胞の障害が認められる)

ⅱ)SEP(体性感覚誘発電位):急性期の脊髄患者の皮質SEPの欠落は、重篤な脊髄障害や回復予後の不良の患者に認められ、SEPの存在は部分回復を予測させるものである。

 

2.障害構造と評価

(1)脊髄損傷の評価一覧

障害 評価方法 評価項目・目的
       急  性  期 骨折・脱臼 単純X-P  頚椎

胸部

腹部

骨盤

多発骨折・脱臼・変形・動揺性

気胸・血胸・横隔膜挙上

イレウス・消化管損傷

骨盤骨折等

CT・CT myelogram 骨折・脊髄の変形
MRI 脊髄の変形・浮腫・出血・梗塞
呼吸 スパイロメーター

血液ガス分析

呼吸機能状態の把握

同上

泌尿器系 尿検査

腎機能検査

ウロダイナミクス検査

尿路造影

尿路感染

電解質異常・腎不全徴候

排尿機構の神経学的障害

VUR・水腎症・結石(慢性期)

循環器 血圧

心電図

迷走神経反射・自律神経過反射

徐脈・不整脈

   急性期および慢性期 麻痺 MMT・ASIA・Zancolliなど

感覚検査・ASIAなど

深部反射

Frankel・ASIAの分類

EMG・SEP

運動障害のレベル

感覚障害のレベル

障害の高位診断

麻痺の程度と回復レベル

麻痺の程度と回復レベル

ADL FIM・Barthel Indexなど 能力障害の程度
可動域制限 可動域測定 拘縮・痙縮・異所性骨化
異所性化骨 単純X-P・血清アルカリフォスタファーゼ 早期発見
深部静脈血栓 周計・浮腫・静脈造影 早期発見と肺梗塞予防

(2)リハ的診断と評価の実際

脊髄損傷患者に施行すべき検査項目を以下に示す。

①情報収集

ⅰ)病歴

ⅱ)既往歴

ⅲ)家族歴

ⅳ)職業

ⅴ)全身状態(呼吸循環生理機能評価)

ァ.循環機能検査(血圧・脈拍・末梢循環機能、特に下腿、足底、手指の浮腫の有無と程度)

ィ.呼吸機能評価(呼吸パターン及び肺活量、1秒率ほか)

ゥ.胸郭可動性(胸郭拡張差)

ェ.起立性低血圧の有無及び程度

ォ.自律神経過反射の有無

ヵ.体温調節能力(異常高体温の有無など)

ⅵ) 障害部位とその状態

*特に病歴をとる際には、下記の項目を正確に記載しなければならない。

ァ.発症機転の詳細

ィ.受傷状態の時間的経過

ゥ.受傷状態の進行状況

ェ.排便・排尿・嘔吐などの内臓機能の状況

ォ.疼痛

胸郭可動性測定部位

1.腋下

2.剣状突起

3.第10肋骨

②形態測定

ⅰ)身長

ⅱ)体重

ⅲ)坐高

ⅳ)胸囲

ⅴ)周径

ⅵ)四肢長

*これにより下記のことを検討する。

ァ.体格・栄養状態

ィ.筋肉の発達や萎縮の程度

ゥ.腫脹・浮腫の状態

ェ.肺換気能力・胸郭拡張能力

ォ.日常生活活動能力・移動動作能力

ヵ.補装具(車椅子・上肢下肢装具・自助具など)の処方

*特に車椅子の処方時には、下記の形態測定が必要である。

ァ.坐高

ィ.肩峰高

ゥ.肩甲骨下角高

ェ.坐位肘高

ォ.上肢長

ヵ.最大腰幅

キ.最大支臀部~大腿長

訓練に関する基準 (Anderson基準の土肥変法)

訓練を行わないほうがよい場合

・安静時すでに脈拍数120/分以上

・拡張期血圧120以上

・収縮期血圧200以上

・動作時しばしば狭心痛を起こすもの

・心筋梗塞発作後1ヶ月以内

・心不全点数5点以上

・心房細動以外の著しい不整脈

・安静時すでに動悸、息切れのあるもの

途中で訓練を休ませて様子を見る場合

・脈拍数が運動前の30%以上増加した場合

・脈拍数が120/分をこえた場合

・1分間10回以下の不整脈の出現

・軽い息切れ、動悸が出現した場合

途中で訓練を中止する場合

・運動中、中等度の呼吸困難が出現した場合

・運動中、めまい、嘔気、狭心痛が出現した場合

・運動中、脈拍が140/分以上になった場合

・運動中、1分間10回以上の不整脈が出現した場合

・運動中、収縮期血圧40mmHg以上、または拡張期血圧20mmHg以上上昇した場合

③関節可動域検査

*関節可動域に関しては、全身の各関節における可動域制限を見る必要がある。

*急性期は、損傷部位下の各関節に不動による関節拘縮を起こしやすく、また慢性期には損傷部以下の支配筋郡に痙性が出現し、そのための筋短縮による関節の変形拘縮を起こしやすい。

*特に損傷部レベルの上下髄節の支配関節では、麻痺筋と残存筋との関係で明らかに変形を起こすので、関節可動域の測定は必要である。

主要髄節と運動機能

髄節&作用筋と機能

C4

・横隔膜(C3~C5)はC4が重要で、C4が残存すれば死に至らず

・胸鎖乳突筋、僧帽筋が働き肩甲骨挙上可能

・三角筋以上の上・下肢筋全て機能せず

C5

・三角筋、上腕二頭筋が有効となる

・C5上位では上腕二頭筋も機能するが、腕橈骨筋、回外筋はC5下位でなければ機能せず

・肩の屈曲、外転、伸展と肘屈曲可能

C6

・前鋸筋、大胸筋(C5~T1)、長短橈側手根伸筋(C5~7)が機能

・尺側手根伸筋(C6~C8)は機能せず、広背筋が不全ながら作用

・短橈側手根伸筋、円回内筋はC6下位で作用

・手関節背屈が有効にできることは機能的予後に重要

・手指機能全く不能

C7

・上腕三頭筋(C6~8)、橈・尺側手根屈筋(C6~8)、総指伸筋(C6~8)が機能

・手関節機能は完全可能

・手指屈曲はtenodesis actionで弱く、母指機能も不完全

・胸腰椎、骨盤を結ぶ広背筋(C6~8)が機能することは重要

C8

・手指屈曲は完全で実用的握力となる

・母指昨日は完全となるが手固有筋の機能は弱い

・指の内外転、つまみ動作は不完全

④筋力検査

*筋力検査では残存筋の筋力、損傷されたレベル支配以下の筋の筋力、筋トーヌス(亢進・減退・消失)、筋の不随意収縮や表在刺激との関連などを見なければならない。

*徒手筋力検査法に基づいて検査を行うが、上肢残存筋の筋力については、Zancolliの分類にそって測定すれば、上肢残存能力を詳しく知ることができる。

Zancolliの分類

最低機能髄節 基本的機能筋 亜型
Ⅰ肘屈筋 C5 上腕二頭筋

上腕筋

A.腕橈骨筋(-)
B.腕橈骨筋(+)
Ⅱ手関節伸筋 C6 長短橈側手根伸筋 A.弱い手関節背屈
B.強い手関節背屈 1.円回内筋(-)

橈側手根屈筋(-)

2.円回内筋(+)

橈側手根屈筋(-)

3.円回内筋(+)

橈側手根屈筋(+)

上腕三頭筋(+)

Ⅲ指の前腕伸筋

 

C7 総指伸筋

小指伸筋

尺側手根伸筋

A.尺側の手指の伸展は完全であるが、橈側の手指と母指の伸展は麻痺
B.すべての手指の伸展が完全であるが、母指の伸展は弱い
Ⅳ指の前腕屈筋

母指伸筋

 

 

C8 深指屈筋

示指伸筋

長母子伸筋

尺側手根屈筋

 

A.尺側の手指の屈曲は完全であるが、橈側の手指と母指の屈曲は麻痺。母指の伸展は完全
B.全ての手指の屈曲は完全であるが、母指の屈曲は弱い。母指球筋は弱い。手内筋(-)

⑤知覚検査

*知覚検査では、障害の部位、障害の程度、及び広がりを見なければならない。

*皮膚知覚の神経支配は上下髄節で多少オーバーラップしており、また障害境界部に知覚過敏帯が存在する場合が多い。これは損傷高位診断において重要である。

*表在知覚(触覚・痛覚・温度覚)だけでなく、深部知覚や反射運動などを深く関連させて調べなくてはならない。

*知覚障害によるジョク創発生の危険性もあるので、ジョク創好発部位を中心に、発赤・腫脹などのチェックを行う。

*触覚は綿、痛覚はピン、温度覚は試験管、振動覚は音叉を用いて検査し、人体皮膚知覚脊髄節支配模式図に記入する。

⑥神経学的所見

ⅰ)脳神経系

ァ.第Ⅹ(迷走)脳神経障害:復声・失声・呼吸困難の出現

ィ.第XI(副)神経障害:胸鎖乳突筋・僧帽筋の麻痺の出現

ゥ.第XII(舌下)神経障害:舌の萎縮・言語・咀嚼・嚥下障害の出現

ⅱ) 腱反射

ァ.上腕二頭筋腱  C5.6(主にC5)

ィ.腕橈骨筋腱   C5.6(主にC6)

ゥ.上腕三頭筋腱  C6~8(主にC7)

ェ.膝蓋腱     L2~4

ォ.アキレス腱   L5、S1~2

ヵ.足間代(clonus)

ⅲ) 病的反射

ァ.手指屈筋反射(Hoffman反射・Tremner反射・Wartenberg反射など) C6~T1

ィ.足底筋反射(Rossolimo反射・Mendel-Bechterew反射など) L5~S2

ゥ.Babinski反射 (成人)求:L5~S1 遠:L4,5

ⅳ) 自律神経障害に対する検査

血圧・脈拍・呼吸数・体温の測定・頭痛・めまい・不整脈・徐脈・異常発汗・発作性高血圧の有無などを十分に把握する。

ⅴ) 神経学的重傷度の診断

Frankelの分類などを用いる。

Frankelの分類

A.運動・知覚喪失

損傷部以下の運動・知覚機能が失われているもの

B.運動喪失・知覚残存

損傷部以下の運動機能は完全に失われているが、仙髄域などに知覚が残存するもの

C.運動残存(非実用的)

損傷部以下に、わずかな随意運動機能が残存しているが、実用的運動は不能なもの

D.運動残存(実用的)

損傷部以下に、かなりの随意運動機能が残されており、下肢を動かしたり、あるいは歩行などもできるもの

E.回復

神経学的症状、すなわち運動・知覚麻痺や膀胱・直腸障害を認めないもの。ただし、深部反射の亢進のみが残存しているものはこれに含める

⑦ 動作能力評価

ⅰ) 起居移乗移動能力評価(座位、寝返り~各種トランスファーまでの動作の可否及び動作分析)

ⅱ) 座位バランス能力評価(バランスグレード、座位姿勢とくに脊柱骨盤の状態、長座位、椅子座位、車椅子座位など)

ⅲ) プッシュアップ能力(長座位および椅子座位、最大殿床距離[坐骨結節~床]、継続時間、姿勢)

ⅳ) 車椅子操作能力

脊損者の坐位バランスのグレード

ストーク・マンデビル方式

Normal: 正常。正しい姿勢や坐位にて、あらゆる方向からの強いPushingに対し正常の立ち直り反射があり、坐位を保持できる。

Good: 優。ある程度のPushingに対し立ち直りがあり、坐位を保持できる。

Fair: 良。両上肢前方挙上ができ、坐位保持が可能であるが、Pushingに対し不安定である。

Poor: 可。坐位はとれるが、両上肢前方挙上ができずPushingに抵抗できない。

Trace: 不可。ごく短時間坐位をとれるが、安定した坐位を維持できない。

Zero: ゼロ。全く坐位をとれない。

⑧呼吸機能検査

*脊髄損傷患者の呼吸機能障害は、呼吸筋麻痺による拘束性換気障害である。

*特に第6肋骨以上の肋骨の動きの効率が非常に悪く、頚髄損傷患者や上部胸髄損傷患者の肺機能低下は著しい。

*測定器具は、肺活量・一回換気量・分時換気量・予備呼気量・1秒率・呼気力などを記録できるスパイロメトリーや呼吸筋力計を利用する。

*簡易スパイロメーターを用いての、フローボリューム曲線・1秒率・努力性肺活量を測定することもある。

*また、その他の簡易テストとして、胸郭拡張差を検査する。

胸郭可動性測定部位

1.腋下

2.剣状突起

3.第10肋骨

⑨日常生活活動検査

ⅰ)頚髄損傷患者は身の回り動作を中心に「坐位のレベルまでの基本動作能力」をテストする。

ⅱ) 損傷レベルとADL機能

ⅲ)FIM・Barthel Indexなどを用いた初期評価、回復過程での経時的評価が必要。

(3)国際的な分類・評価法

ASIAの分類:神経学的・機能的分類を含む。IMSOP(The International Medical

Society Of Paraplegia)も支持している国際的評価方である。

「脊髄損傷」の画像検索結果

(#^.^#)参考文献

医療学習レポート.脊髄損傷


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