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(^w^)脳卒中病型と特徴の話


“(-“”-)”題名:脳卒中病型と特徴の話

脳梗塞:脳梗塞は血管がつまった結果、脳細胞に酸素やブドウ糖が供給されなくなるため、脳細胞が壊死状態になることを言う。よく問われる脳梗塞と脳血栓との違いを簡潔に言えば、脳血栓は脳の血管に狭窄や閉塞を起こす病気で、この結果、脳細胞が壊死に陥った状態が脳梗塞である。血流が正常の10~20%以下、代謝が15%以下になり、その状態が15分~1時間続くと病巣中心部は梗塞に陥る。脳梗塞の原因となる病気にもう一つ、脳塞栓がある。また、脳血栓、脳塞栓のほかに脳の血流を妨げる病気に、急激な血圧低下による脳循環不全、脳血管攣縮などがある。

➣脳血栓症:脳動脈は加齢とともに動脈硬化を起こしてくる。すなわち、動脈の最内層の内膜にコレステロールや中性脂肪などの脂質が沈着し、さらに潰瘍や血栓形成などを伴って、粥腫(アテローム)が形成される。この状態をアテローム硬化とよぶ。このアテローム硬化は脳血管のうち、内頚動脈・中大脳動脈・椎骨動脈などの起始部に好発する。さらに主幹動脈だけでなく、これより末梢の脳表の動脈にもアテローム硬化は生じる。アテローム硬化をきたした動脈は次第に狭窄し、最終的には完全に閉塞する。このような脳血栓による梗塞をアテローム血栓性脳梗塞とよぶ。このアテローム硬化は脳内の主幹動脈だけでなく、細動脈にもおこる。特に穿通枝とよばれる脳実質を貫く細い動脈は、脳の深部や脳幹を栄養しているが、側副血行路をもたないために容易に梗塞を生じる。こうしてできた小さな梗塞をラクナ梗塞とよぶ。

➣脳塞栓症:脳塞栓症とは、心臓の弁膜などに生じた凝血塊や、大動脈・総頸動脈などに生じたアテローム硬化巣から剥離した血栓などが栓子となって、その部分より末梢の脳動脈に引っかかり、閉塞をきたすものである。このような脳血栓による脳梗塞を塞栓性脳梗塞と呼ぶ。この場合、太い主幹動脈に閉塞をきたすことが多く、また突然の閉塞のため、側副血行路が発達する間がないので、脳梗塞は広範囲に生じ、意識障害などの症状も激しいのが特徴である。脳塞栓症は心房細動などの不整脈を認める人に起こりやすいのが特徴である。このため、不整脈を持つ人には予防的に抗血栓剤(塩酸チクロピジン、アスピリン、ワーファリンなど)を服用させる場合がある。脳梗塞の分類の中に一過性脳虚血RINDというものがある。

 

脳梗塞

脳出血

クモ膜下出血

前ぶれ

しばしばある

なし

なし

発症時

休息時に多い

活動時に多い

突発的

頭痛

軽いまたはない

しばしばある

激痛で持続する

発症時嘔吐

あまりない(脳幹は除く)

しばしばある

しばしばあり激しい

血圧

正常~高血圧

高血圧

正常

意識障害

ないことが多い

多くあり次第に悪化

一過性にあることが多い

首筋の硬直

ない

まれ

しばしばある

片マヒ

発症時からあり進行

発症時からある

発症時にはない

共同偏視

ないことが多い

しばしばある

ない

失語症

ときにある

ときにある

きわめてまれ

 

 

≽ ラクナ梗塞

概念:脳内穿通枝動脈の血流障害による梗塞をラクナと呼び、単一の穿通枝動脈領域の梗塞を意味する。

ラクナ症候群:視床や内包膝部の梗塞以外のラクナ梗塞では、失語・失行・失認などの皮質症候、単麻痺、同名半盲、健妄、意識障害、痙攣はおこらない

古典的ラクナ症候群

①半側の異常感覚や感覚障害。

②顔面を含む片麻痺、感覚障害なし。

③一側下肢に強い不全麻痺と小脳失調。

④構音障害と一側の巧緻運動障害。

⑤半側の感覚障害と同側の片麻痺。

ラクナ状態

概念:ラクナが多発して構音障害、歩行障害、仮面様顔貌、筋強直などのパーキンソニズム様症状、その他の錐体外路症状、仮性球麻痺、失禁、痴呆などの組み合わさった多彩な症状を呈するもの。

頭部X線CT、MRI:神経症候を説明しうる位置に直径15mm未満の小梗塞を認めるが、小さく明らかでない場合もある。

病型のポイント

①安静時の発症が多い      ②進行は緩徐。段階的憎悪     ③意識障害、皮質症状はない

④高血圧や糖尿病などの存在  ⑤CTで直径15mm未満の梗塞  ⑥脳血管造影で動脈閉塞なし

 

≽ アテローム血栓性脳梗塞

概念:頭蓋外や頭蓋内の大血管の粥状硬化性病変(アテローム)を基盤として生じる脳梗塞をいう。大血管に病変があるため、重症化する可能性が高い。

症候

①前駆症状として、一過性脳虚血発作がみられる。

②安静時、睡眠中に発症し、起床時に異常に気づくことが多い。

③徐々にしかも段階的に数日進行することもある。

④発症時意識障害は軽度の場合が多い。

⑤片麻痺、失語や半側空間無視などの皮質症状、半盲がおこる。

⑥病巣が小さいわりに強い症候を示すことがおおい。

⑦頚部・上肢の触知可能な血管拍動の触知不能、血圧の左右差を認めることがある。

病型のポイント

①安静時の発症が多い  ②進行は緩徐。段階的憎悪  ③アテローム硬化を伴う基礎疾患の存在

④CTで、基底核や深部白質の皮質下に限局した梗塞

 

≽ 心原性脳塞栓症

概念:最も特徴的なのは、「突発完成型」の発症様式である。局所神経症状が数秒、数分で極に達する。発症は日中活動時に多いが、起床直後の発症も少なくはない。発症から2週間以内の急性期に、約10~20%程度再発する。

症候

①内頚動脈系、特に中大脳動脈の栓子による閉塞が最も多いため、顔面を含む重度の片麻痺と感覚障害、1同名半盲を示す。さらに優位半球では失語、劣位半球では片麻痺に対する病態失認、半側空間無視、着衣失行など多彩な皮質症状を呈する。

②発症前後に他臓器や四肢の塞栓がみられることがある(四肢のチアノーゼ、血尿、腹痛に注意)。

病型のポイント

①特定動脈領域の徴候が突発し、数分以内に完成。

②意識障害は高度のことが多い。皮質症状を伴うことが多い。

③塞栓源としての心疾患の存在。

④他臓器塞栓の存在。

⑤脳浮腫が多い。複数の血管領域に多発する梗塞巣。

 

梗塞部位  発生部位と神経症候

 

内頸動脈系の閉塞では、症候は一側性で片マヒ、半身感覚障害、ときに失語、失行、失認、同名半盲を伴う。椎骨脳底動脈系の閉塞では、症候は1側性ないし両側性で、運動麻痺、感覚障害、小脳症候、脳神経症候その他が段階的に(脳血栓症)または突発的に(脳塞栓症)出現する。

 

 

発症年齢・遺伝性

脳血栓症は65歳以上の比較的高齢者に多くみられるが、若年発症例も少なくなく、かつその一部には先天性凝血系異常などの遺伝性がみられることもある。脳塞栓症は、以下の原因疾患により若年から高齢者まで幅広くみられるが、やはり高齢者が多い。

 

リウマチ性心臓弁膜症(僧房弁狭窄が最も多い)

心房細動(僧房弁狭窄、虚血性心疾患によるものが大部分)

洞不全症候群

壁在血栓を有する心筋梗塞

急性・亜急性感染性心内膜炎

非感染性または消耗性心内膜炎

心臓外科手術(特に弁置換術)

左房粘液腫

僧房弁逸脱症

特発性心筋症

その他

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【画像診断】

<CT>

頭部X線CT -検査の意義

頭蓋内病変の質的診断:超急性期には出血などのその他の疾患の除外診断。

脳梗塞の局所診断:閉塞血管、発症機序、臨床病型、予後の推定。

CTの特徴と画像所見の見方

CTスキャンは、X線を目的の身体部に照射し、身体組織を透過するX線量をコンピュータで計算処理して画像として表現するものである。したがって画像には、X線が透過した身体部位の断層面が描写される。このCTの見方は、正常組織のCT上の濃淡・形状を覚えることが第一である。

□画像の濃淡をよむ

○低吸収:まず、画像は真っ黒に写る。空気と並んで低吸収を示す組織は脂肪、次いで脳脊髄液が挙げられる。病的状態では、嚢胞、浮腫、脳梗塞巣などが低吸収を示す。

○等吸収:脳実質は灰色に写る。これと同等の濃度を示す場合を等吸収と表現する。同じ脳実質でも細胞密度の高い灰白質(大脳皮質や大脳基底核など)は、白質に比べやや低吸収にみえる。病的状態では、血腫は初めは高吸収を示すが10日以上過ぎると等吸収へと変化する。

○高吸収:頭蓋内で高吸収に写るのは、頭蓋骨と頭蓋内の生理的石灰化病巣(脈絡叢、松果体など.まれに大脳基底核にもみられる)である。病的状態の代表的なものが血腫(出血)である。先に述べたように出血(血腫)は初期には白く写るが2~3週間過ぎると、灰色から黒っぽく濃度が変わってくる。これは血液の中の鉄分(ヘモグロビン)の濃度に伴う変化とされている。

□構造の歪みをよむ

色調に次ぐCTの見方の第2のポイントは、左右の構造の対称性が壊れていないかどうか、さらに正中の構造にゆがみがないかどうかを見ることである。

 

<MRI>

強力な磁場装置の中に身体をおき、ここにある一定の周波数の電波をあてたとき、電波をきった瞬間から当てられたものと同じ周波数の電波が、生体組織に含まれる水素原子から発信される。これを核磁気共鳴現象という。この水素原子が発する電波の信号をコンピュータに入力し、いろいろな条件で処理して断層画像を作ったものがMRIである。X線CTでは、X線透過率だけが信号の強度に影響していたのに対し、MRIでは、信号強度がさまざまな因子によって影響を受けるため、1枚の画像の中には極めて多くの情報が含まれる。

≽T1強調像:脳実質の外形や脳神経の観察に適している。

白質>灰白質≫髄液

≽T2強調像:髄液と接する血管の鉄の生理的分布を見るのに適している。

髄液≫灰白質≧白質>鉄の分布場所>血管

≽PD強調像:脳の内部、灰白質と白質の区別に適している。

灰白質>白質≧髄液

-検査の意義

①発症早期の病巣の描出

②脳幹や小脳梗塞の診断

③視床・基底核・内包の小脳梗塞の描出

④陳旧性脳内出血の診断

⑤出血性梗塞の感度が高い

⑥矢状断や冠状断による病巣の描出

問題点:検査時間がかかるため、緊急対応がしにくい。

MRIの特徴と画像の見方

□画像の濃淡をよむ

○高信号と低信号:水素原子から発生した電波の信号の強さ(信号強度)が強いものを「高信号」、弱いものを「低信号」と表現する。MRIの画像上では高信号は白く、低信号は黒く描出される。

○T1強調像とT2強調像:MRIでは信号処理の条件を変えることにより、異なった信号の画像を作ることができる。その代表的なものがT1強調像とT2強調像です。

□MRI血管造影(MRA)

MRIでは針も刺さずに血管を描出できる。このMRIによる血管造影をMRAとよんでいる。条件を変えることで動脈撮影も静脈撮影もできる。

 

脳梗塞はCT上、X線吸収の低い(黒い)陰影を示し、通常発症24時間目当たりから出現する。

(すなわち、脳梗塞では発症初期には正常CT像の事がある)

 

診断・鑑別診断

脳出血との臨床的鑑別点を挙げるが、臨床症候のみでは鑑別はかなり困難である。

CTかMRIをとって鑑別する。

脳梗塞と脳出血の臨床的鑑別点

脳出血 脳梗塞
既住のTIA

高血圧症

心疾患

++

+or-

発症期間

発症からpeakまで

頭痛

項部強直

網膜前出血

昼間、活動時

6時間以内

+が多い

時に+

安静時

1時間以上~1日以上

稀に+

 

脳梗塞症の臨床的診断は、片麻痺を示す症例では、麻痺側の反対側にも神経症候があるか否かに注目する。

 

【症状】

1)全身状態

急性期:ⅰ)一般的内科所見:血圧、脈拍、呼吸、皮膚・粘膜、体温 ⅱ)消化管出血 ⅲ)電解質・水・栄養状態の異常:電解質異常、栄養 ⅳ)心肺機能:循環器系、呼吸器系 ⅴ)感染症 ⅵ)耐糖能の異常 ⅶ)けいれん発作

回復期:ⅰ)耐糖能の異常 ⅱ)循環器系の異常

ⅲ)合併症(骨・関節疾患):変形性骨関節症、腰痛肩関節亜脱臼、陳旧制骨折、続発性合併症

2)神経学的所見

(1)意識障害:意識は、大脳全体の機能が正常に働くこと、脳幹網様体から大脳全体に投射される賦活系の働きによって維持されている。いずれの機能障害も意識障害をもたらす(JCS,GCSなど)。

(2)運動障害

➣運動麻痺:大脳運動野から筋繊維に至るひとつないし複数の経路の障害により筋収縮が行えないようになった状態である。麻痺の程度によって完全麻痺(まったく随意運動ができない状態)あるいは不全麻痺(多少とも随意運動が可能な状態)と呼ばれる。

ⅰ)脳卒中による運動麻痺の特徴:大脳皮質を中心とする複雑な上位運動制御のコントロールが障害されて、下位運動中枢が異常な運動パターンを示す。

ⅱ)運動麻痺の回復パターン:運動麻痺が出現した直後は筋緊張が低下しており、弛緩性麻痺と呼ばれる。麻痺後の時間経過(発症後4週から7週)につれて筋緊張が亢進し、痙性麻痺に移行する。痙性の程度に応じて特徴的なパターンを示す。この経過はブルンストロームの運動回復段階で表される。麻痺側上肢は屈筋位、下肢は伸展位および尖足をとり、片麻痺に典型的なウェルニッケマンの肢位をとることもある。

➣筋緊張と反射

ⅰ)筋緊張:安静時に関節を他動的に屈曲・伸展するとき、わずかな抵抗を感じることができる。筋固有の粘弾性と、筋伸張反射を介する神経の興奮を反映する張力を合わせたものと考えられる。筋トーヌスには被動性と伸展性が区別される。その異常には、筋緊張の亢進と低下がある。筋緊張亢進には、さらに筋固縮と痙縮がある。筋緊張の低下した状態を筋緊張低下という。いずれの状態も結果として、運動の基本である筋の物理的性質が影響を受けることにより、運動の正確さ(巧緻性)が損なわれることになる。脳卒中では痙縮が特徴である。関節の他動運動によって筋を急速に伸展した場合、ある程度まで筋が伸張されたとき、抵抗は最大に感じられ、その後は急速に低下する。固縮のような他動運動の間、持続する抵抗ではない。痙縮が著しい場合、最初から抵抗が強く筋を伸展させることが困難である。痙縮は上肢では屈筋群、下肢では伸筋群に強い。

ⅱ)連合反応:連合反応とは、片麻痺患者が健側肢の随意収縮を行ったときに、患側肢の筋トーヌスが亢進して、ゆっくりとした動きが起こり、姿勢が変化する現象である。

ⅲ)反射:反射は意志に無関係に起こる、刺激に対する応答である。健反射(深部反射あるいは伸張反射)、皮膚反射(表在反射)、病的反射がある。

➣協調運動障害

➣平衡障害

➣不随意運動:不随意運動は1個の筋繊維あるいは1個の筋、または筋群の不随意的な収縮によって起こる現象で、身体の運動に効果をもたらすものと、単に筋の収縮にとどまるものとがある。不随意運動の分類は完全に統一されてはいない。また名称と定義が異なる場合もある。脳卒中による不随意運動の出現頻度は低いが、振戦、片側バリズム、けいれんは比較的多く見られる。

(3)感覚障害:障害部位により、さまざまな感覚障害を生じる。リスク管理や運動障害との関わりに重要である。

(4)自律神経障害:脳卒中の急性期には呼吸、血圧、瞳孔異常、発汗、体温異常、排尿・排便障害などさまざまな自律神経障害が見られる。中枢神経系の自律神経中枢は、前頭前野、帯状回、弁蓋部皮質、基底核下部、視床下部、視床髄板内核群、中脳、橋延髄被蓋などがある。脳卒中でこれらの中枢に直接的あるいは間接的に影響の加わることが自律神経症候出現の原因とされる。一般的には、病変の大きさや機能障害の強さと関連し、予後不良の徴候とされている。麻痺に伴う自律神経徴候として、浮腫、血圧の左右差、皮膚温異常、脈拍の大小、爪色紅潮、皮膚描画反応の差、手掌の紅潮・湿潤、頬紅潮、手指のチアノーゼなどである。筋萎縮、皮膚萎縮、色素沈着、爪の変形を生じることもある。

➣起立性低血圧:起立性低血圧は、起立時に低血圧を起こすもので、起立時の血管運動反応の欠損が原因である。起立によって収縮期血圧が25mmHg、拡張期血圧が15mmHg降下する場合を陽性とし、自覚的には立ちくらみ、めまい、失神などを訴える。脳卒中では、高齢者ではとくに、比較的短期間の安静臥位によって起こることも多い。早期離床、早期訓練を妨げる原因になる。起立性低血圧の程度によって、座位・起立負荷を行い、血管運動反応を刺激することが必要である。

➣肩手症候群:患側上肢の熱感、腫脹、疼痛を示す場合に肩手症候群と呼ばれる。反射性交感性ジストロフィーが機序として働いていると考えられている。四肢の外傷や神経損傷をきっかけとしておこる疼痛、自律神経徴候(浮腫、皮膚紅潮、皮膚温上昇、骨萎縮など)、感覚障害、運動障害、精神症状からなる症候群である。重度の感覚障害や身体部位失認などを有する患者では、麻痺側上肢の乱暴な操作によって関節や軟部組織の損傷を起こし肩関節、手関節の腫脹や疼痛を生じることがあるが、この場合には誤用症候群と呼ばれる。初期には疼痛に対する非ステロイド性の消炎鎮痛薬の使用と十分な関節可動域運動が大切である。

➣褥瘡:褥瘡は持続的な外力によって皮膚および皮下組織に生じた血流障害に起因する皮膚潰瘍である。急性期に臥床を強いられている時期に形成されやすい。回復に要する時間を考えると予防が大切であり、頻回の皮膚状態の観察と体位交換が必要である。

(5)膀胱直腸障害:脳卒中の排尿・排便障害:脳卒中では脊髄病変と異なり、排尿反射弓が直接障害されることはない。脳卒中の排便障害は切迫性尿失禁、頻尿が圧倒的に多い。排便障害も脳病変に関係するものは便失禁が多い。しかし、臨床、その他の原因で便秘になることもある。昏睡の状態では排泄機能が不能となる。大脳の広範な両側病変で昏睡となったとき、膀胱・肛門括約筋の筋緊張が変化して排泄障害が生じることがある。筋緊張の亢進では尿閉・便秘、筋緊張の低下では尿便失禁となる。痴呆状態でも排尿機能の調節が不能となり、尿便失禁を起こす。ラクナ梗塞では両側半球に多数の小梗塞巣がみられ、臨床的には偽性球麻痺の症候を示す。このような状態や両側錐体路徴候が出現するときに尿便失禁が生ずる。排泄障害は両側性病変に多い。くも膜下出血の後に正常圧水頭症が出現することがあるが、この際にも尿失禁が問題となる。前頭葉の両側病変でも排泄障害が出現する。尿便失禁は脳卒中患者の身辺処理や移動の自立を妨げる大きな要因となる。適切な診断と対応が必要である。

(6)高次脳機能障害:言語、認知、思考、記憶などの心理過程は、大脳皮質を中心とする脳のさまざまな領域の複雑な機能分担により成り立っている。通常、それぞれの領域に局在する機能は統合され、全体として働いているが、脳が損傷されると、その部位に応じて特異な高次脳機能障害あるいは神経心理学的症候が出現することがある。ただし、脳卒中の場合、それらの症候と病巣を対応させることは必ずしも容易ではない。リハビリテーションにおいては、むしろ症候の行動的特徴を的確に捉えることのほうが重要である。おもな高次脳機能障害としては、失語、失認、失行、記憶障害などがある。いずれも、リハビリテーションにおける諸技能の再学習を著しく阻害する。

➣失語症:「一度獲得された言語が失われること」

スクリーニング 発話 書字 聴覚理解 読解 復唱
ブローカ失語

×

×

×

ウェルニッケ失語

△  (錯語) △

×

×

×

全失語

×

×

×

×

×

超皮質性運動失語

×

×

超皮質生感覚失語

△  (錯語) △

×

×

混合性頂皮質性失語

×

×

×

×

伝導失語(弓状束がやられる)

×

プロソディ=言葉のメロディー(強勢、速度、高低)は発語の一部の要素で運動性で低下

詳細な評価にはSLTA(標準失語症検査)、WAB(Western Aphasia Battery)

アナルトリー…発語に努力を要し、特に発語開始が困難で構音の歪みあり、構音障害(dysarthria)とは異なり、構音の障害に一貫性なし。失語は時間経過とともに変わりうる。

➣失行(Apraxia):「運動障害がなく行うべき動作や行為が分かっているが出来ない状態」

○構成失行:細部を明確に知覚し、対象の構成部分の関係を把握して正しく合成することを要する組み合わせ、または構成の活動の障害

*頭頂葉、後頭葉の障害  *右半球、左半球どちらの障害でもみられる

○観念運動失行:比較的単純な動作が口頭命令や模倣では出来ないが自発的運動では保たれている

例:チョキやキツネ

*優位半球頭頂葉下部の広汎な障害  *ADL上障害は目立たない

○観念失行:個々の動作は可能だが、いくつかの動作を含み複数の物品を用いるような系列行為が障害

*優位半球を中心とする広汎な障害  *ADLに大きく影響する

○口部顔面失行:舌、口唇の運動、嚥下動作、顔の表情などを指示通りに行えない

*前頭葉

○着衣失行:着衣の選択的障害

*劣位半球頭頂後頭葉  *軽度の障害は優位半球でも起こる

○肢節運動失行:麻痺と失行の中間?

*対側の前頭葉(中心前回)

➣失認(Agnosia):「感覚路が正常だが感覚路(視覚、聴覚、触覚…)を通して対象が何であるかを把握できない状態」

○視覚失認

・物体失認:両側後頭葉(稀に左一側病変で起こる)

・色彩失認:優位半球後頭葉(色盲でないことを確認しておく)

・相貌失認:両側後頭葉

・同時失認:優位半球側頭・頭頂・後頭葉;状況画の細部は分かるが全体の意味が了解できない

・純粋失読:書字は障害されない。色彩失認の合併多い

○Balint症候群

ⅰ.精神注視麻痺:視線が固定。凝視してないときは視線があちこちに動く

ⅱ.視覚性運動失認:凝視したものを掴もうとしても大きくずれる

ⅲ.視覚(空間)性注意障害:視覚性刺激に対する注意低下

*両側頭頂葉~後頭葉

○地誌的障害:白地図に都市の所在を示せない(右頭頂葉後部~右海馬)

よく知っている場所や道を認知できない、家の見取り図がかけない(右頭頂葉~後頭葉)

○聴覚失認

・純粋語唖:語音認知↓ *左(or両側)のウェルニッケ野

・感覚性失音楽:音楽能力↓ *右側頭葉、前頭葉

・皮質聾:純音閾値↑ *両側側頭葉

○Gerstman症候群

病巣:左半球頭頂葉角回~後頭葉

四症状:手指失認、左右障害、失算、失書

その他の合併症として失語(78,4%)、失読(59.5%)、構成失行(59.5%)等

○病態失認(身体失認):片麻痺の否認、身体半側の忘却、不使用

*劣位半球頭頂葉

~遂行機能障害~

「習慣どおりに行う決まった運動ではなく日常生活において自ら目標を設定し、計画

を立て、実際の行動を効果的に行う能力を言う。より高度な認知機能に基づいて行う行動」

1.目標の設定 2.計画の立案 3.計画実行 4.効果的遂行

・行動の開始困難             ・行動の中止困難

・自発性の低下              ・衝動性

・認知ないし行動の転換の障害(保続、固着)  ・脱抑制

・行動の維持困難              ・誤りを修正することの障害

➣記憶障害

側頭葉の内側(海馬)と関係

即時記憶:順唱7桁、逆唱5桁が目安、品物3つの復唱

近時記憶:数日前までの出来事の記憶

遠隔記憶:生年月日、出生地、小学校…←皮質全般に蓄えられている

順行性健忘:受傷より後のことを覚えられない(記名力障害)

逆行性健忘:受傷前のことを忘れている

宣言的記憶:言語として覚える(左の海馬×)

手続き記憶:規則に基づくあるいは自動的な手順に関する非言語的記憶(右の海馬×)

➣半側空間無視(USN)

「さまざまな刺激に対する反応や行動に際し、要素的な感覚、運動障害を持たないのに大脳病巣の反対側の刺激に反応しない。またそちらを向こうとしない症状」

・右半球損傷者に多い

・頭頂葉、側頭葉、前頭葉、視床、新線状体(被殻、尾状核)…

・頭頂側頭葉損傷では知覚感覚課題のUSNを呈する

・前頭葉損傷では運動探索課題のUSNを呈する

○USNに見られる随伴症状

・着衣障害、構成障害 ・地誌的見当識障害 ・病態失認

・視覚失認、相貌失認 ・数量概念の障害  ・失音楽

・言語プロセスの障害(ex.ユーモア、ことわざの理解の傷害、発話の冗長さ、逸話)

・右半球症候群:多幸的・陽気、不注意、集中力↓,物事に対する諦めのよさ、投げやりな態度、根気のなさ、責任感乏しい、失敗や間違いを恥じない(鈍感)、抑揚のない平坦な話し方

(7)構音障害:語音を正しく作り出すためには声帯や口蓋、舌、口唇などの適切な形に変形されることが必要です。このように声帯の通路からある諸器官の運動により語音を作り出すことを構音という。これらは大脳皮質運動野の顔面、口腔、咽喉頭諸器官の運動を司る部分からの指令のもとに随意的に行われている。ここから出た神経線維は集合して皮質延髄路となり、内包膝部、大脳脚を通って脳幹にある構音器官に関係した脳神経核(顔面神経核、疑核、舌下神経核)に終わる。口唇や舌の運動を司る顔面神経や舌下神経は一側性支配なので、例えば右側の顔面~咽喉頭領域の運動を司る大脳皮質・白質が損傷された場合は、口唇や舌の運動麻痺は左側だけに生じる。この場合構音障害がおこる。

○顔面神経病変)口唇周囲の筋の麻痺のため、口唇破裂音・口唇鼻音の構音障害をきたし、パ音・バ音・マ行の発音が不明瞭になる。

○迷走神経障害)口蓋諸筋の麻痺のため、語音が鼻音になる。

○舌下神経障害)舌の動きが不自由になり、ラ行の発音ができなかったりもつれたりする。

(8)摂食・嚥下障害:一般に下部脳幹(延髄領域)の損傷は重大な嚥下障害をもたらす。なぜなら延髄に嚥下中枢(弧束核と疑核)があるからである。発症初期には咽頭嚥下がまったく欠如する場合もある。改善しても輪状咽頭筋の開大や梨状窩の食物残留などの問題を残す場合がある。

 

●障害部位別症状

(1)内包障害

・内包を含む障害は、最も多く見られるものである。

・障害の反対側に出現する片麻痺。

・一般に上肢の麻痺は下肢の麻痺より高度である。

(上肢のうちでは遠位筋が強く障害され、手指の巧緻運動が最も強く侵される。)

・古くなるとウェルニッケマンの肢位をとる。

・片麻痺と同じ側に顔面・舌下神経の中枢性麻痺が認められ、しばしば顔面を含む半身の感覚鈍麻を伴う。

・発作直後:弛緩性麻痺⇒痙性麻痺に移行するものが多い。(終始弛緩性のこともある。)

・片麻痺が軽度で回復傾向に富んでいる⇒内包前脚(強剛rigidity)または後脚の前2/3(強剛痙縮rigidospasticity)の障害による。

重症な片麻痺で回復傾向に乏しい⇒内包後脚の後ろ1/3の障害(痙縮spasticity)による。

・病的反射はバビンスキー反射を認めることが多い(前脚障害ではロッソリーモ系反射が、後脚前2/3ではバビンスキー、ロッソリーモ系反射のいずれもが出現しやすい)。

(2)脳幹障害

・反対側の片麻痺と、同側の脳神経麻痺をおこす(交叉性片麻痺)。

・脳幹外側の障害ではワレンベルグ症候群という、片麻痺を示さず特異な症候群を示す。

※ワレンベルグ症候群

延髄背外側部の障害による症候群。後下小脳動脈の閉塞によるとされていたが、むしろ椎骨動脈の血栓によるものが多い。発作時には、頭痛、回転性めまい、悪心、嘔吐を訴える。症候は次の通り。

血管障害側】顔面の温度・痛覚消失(感覚解離)、角膜反射低下、ホルネル症候群(眼瞼下垂、瞳孔縮小、眼球陥没)、眼振特に回旋性眼振、眼球側方突進、発声困難、嚥下困難(軟口蓋、咽頭、喉頭の麻痺)、小脳性運動失調、筋緊張低下。

反対側】体幹および上下肢の温度・痛覚消失(感覚解離)がある。

(3)視床障害

・病巣反対側の全感覚鈍麻(特に深部感覚が強く障害される)

・手口感覚症候群:視床の限局性障害でおこり、一側の手掌と口周辺の感覚障害)。

・視床痛:反対側に自発的な激しい疼痛。

・運動失調:深部感覚の障害により起こるものと、小脳性のものとがある。

・不随意運動:深部感覚の障害によって起こる(閉眼でおこる)ものと、視床からの自発運動で手のアテトーゼに似ている(開眼でもおこる)ものとがある。

・視床手・失語:左視床後部の障害で、まれではあるが視床性失語がおこる。

・視床性無視:右視床内側核群の障害で、左半側空間失認、病態失認、地誌的障害、相貌失認などがおこる。

・視床性痴呆:両側性ないし優位側の、視床前内側部に局限性に病変を生じたときに痴呆を呈する。記憶低下による健忘症候群が中核症候で、意欲低下や自発性の低下、失計算、失見当識なども伴う。

(4)延髄障害

・球麻痺症候群:嚥下困難、構音障害、咀嚼困難。

(脳血管障害で延髄が直接障害されて球麻痺を呈することは少なく多くは偽性球麻痺)。

 

障害部位による運動麻痺の特徴

障害部位 特徴
運動野

 

運動野には内側から外則に向かい足の趾から口まで随意運動の中枢が並んでいる。

運動野は範囲が広いので、運動野全体が障害されることは少なく、上肢のみとか単麻痺が多い

内包

錐体路線維は密に集まっているので、脳神経領域を含む片麻痺を起こすことが多い。

中脳

 

大脳脚の近くを動眼神経が通っているので、障害側の動眼神経麻痺と反対側の片麻痺

を呈する。(交叉性片麻痺)

 

顔面神経、外転神経が近くを通っているので、障害側の外転神経、顔面神経麻痺と片麻痺

を呈する。

延髄

 

舌下神経が延髄錐体の近くを通っているので、障害側の舌の萎縮、障害側への偏位と

反対側の片麻痺を呈する。

脊髄

 

後索線維、脊髄視床路が同時に障害されてBrown-Sequard(ブラウン・セガール)

症候群を呈することがある。

後索線維は延髄で、脊髄視床路は脊髄で交叉するので、深部感覚は障害側で、表在感覚は

反対側で低下する。運動麻痺は同側に出現する。

 


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